忘却のレチタティーボ 6
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破った罰だと思えば
「冗談だ」
……なんか、くすくす笑ってるし。
私、からかわれてる?
上司殿って、こんな性格だったっけ?
「君は予定通りの休暇を過ごしてくれ。外出は、仕事場にさえ来なければ、自由にしてくれて構わない。君を狙っていたヤツは、もう居ないから」
狙って?
…………ああ、そうか。
いきなり押し付けられた長期休暇。
あれは、メアリ様から私を遠ざける為のものだったのか。
帰りに付き添ってくれてたのも、何か事情を知ってたから?
「事後処理は全部俺がしておく。しばらくは忙しくなるから、迂闊に職場をうろつかれても、俺が困る。解るな?」
「……はい」
立ち上がった室長に見下ろされて、渋々頷く。
今回の件は多分、私が原因で引き起こされたことだと思うんだけど。
一連の流れを思い返してみた限り、正直、私の手には負えない。
自分の力不足を感じたら、素直に上司に従う。
これも、貴方が教えてくれたことですよね。
「休暇が終わったらまた、ご指導のほど、よろしくお願いします!」
ぺこっと一礼したら、室長は一瞬目を見開いて。
私の頭を、手の甲でコツンと軽く叩いた。
「ああ。一人前の仕事ができるまでは、しっかりと扱いてやる」
うん、そうだね。
この距離だよね。
この距離で歩こう。
一緒に歩いてくれる貴方を、私はこの距離で見つめる。
寄りかかるのではなく、膝を抱えるのでもなく。
自分の手で探りながら、自分の足で、貴方と一緒に歩いていく。
「ベゼドラ」
クロスツェルさんと話してたベゼドラさんが。
呼びかけた室長に、不機嫌絶頂な顔を向ける。
……あれ?
そういえばアリア様、さっき……
「アリアを置いてきた廃墟までは道案内してやる。そこからは好きにしろ。二度とステラに関わるな」
「俺らも、そんな小娘に用は無ぇよ」
うわあ〜。
分かりやすい人だなあ。
クロスツェルさんもだけど。
アリア様、いろいろ大変そう。
「ありがとうございます。すみませんでした、ステラさん」
「あっ、いいえ……、はい」
クロスツェルさんは、礼儀正しい分だけ、さっきみたいな行動が怖い。
男の人を見かけで判断しちゃいけないってやつの典型っぽいな。
でも。
「ちゃんと、会えると良いですね」
アリア様のほうは、あんまり会いたがってる感じじゃなかったけど。
会いたくないっていうより、会いたくても会えない? のかな?
わけありなんだろう。
事情も知らない他人の私が、そこに介入して良いもんじゃないし。
それこそ、私なんかじゃどうにもできないんだけどさ。
頑
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