忘却のレチタティーボ 6
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「っ、……アリアについては、ほとんど何も知らない。興味も無い。ただ、数年前に突然ふらっと現れて、俺の実体の封印を解く代わりに彼女の記憶を消して欲しいと頼まれただけだ」
ん?
それって、ついさっき夢で見たあれ?
じゃあやっぱり、あの綺麗な女性はアリア様だった、ってこと?
「アリアの記憶を消した?」
「ああ。わざわざ山奥の廃墟へ行って、子供に戻った後でな。別人になって死にたい風な言い回しをしていたが……あの後も生きてたんだな」
「アリアが? 死にたいだと?」
クロスツェルさんとベゼドラさんが顔を見合わせて、首を傾げた。
「ついでに、俺が彼女の力を必要とした時に、一度だけ喚べる約束をした。だからもう、俺とアリアに繋がりは無い。何か知りたいなら……そうだな。あの廃墟へ行ってみればいい。死ねる可能性がある場所に選んだくらいだ。何かしらのこだわりがあったんだろ」
「どこのことだ」
「女神が名乗りを上げた最初の地、だそうだ」
山奥の廃墟。
折れた柱や瓦礫があちこちに散乱してて、床も所々ひび割れてた。
あれ、なんとなく教会とか宗教関係の遺跡っぽいなって思ったんだけど。
もしかして、アリア信仰で一番古い神殿とか……なのかな?
「もういいだろう。俺は他に何も知らない。ステラを助けてくれたことには感謝してるが、それだけだ。アリアなんかどうだっていいんだよ。ステラを離してくれ!」
クロスツェルさんがベゼドラさんに一つ頷いて、私を解放してくれた。
私は膝立ち状態の室長に駆け寄って、鷲掴みにされてた前髪を撫でる。
さらさらだからすぐに戻ったけど、変なクセが付いたらどうするのよ!
もう!
「…………髪の心配は要らないから」
「呆れないでください。私には結構重要なんです!」
「いや、まあ……、良いんだが……」
「ふぇ!?」
な、なんでお腹にしがみつくんですか、上司殿!?
あ、そうか膝立ちだから……いや、それはあまり関係なさそう。
「……大丈夫ですよ、私は」
そこまでふるふる震えられると、私としても、どう対応して良いものか、困ってしまいます。
でも、これはあれだ。
この人はスイなんだから、スイを抱っこする感じで良いんじゃないかな。
さっきも一応、ポイされなかったんだし。
頭を抱えて、なーでなで。
ああ〜。
スイのもふもふとは違うけど、この滑らかな手触りにも癒されるぅ〜。
「…………君の仕事、三割増し」
「へ!? な、なんで!?」
「なんとなく」
「上司権限を行使して苛めないでくださいっ!」
あー、でも。
よくよく考えてみたら、一週間と一日の自宅待機初日だったよね、私。
言いつけを
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