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逆さの砂時計
忘却のレチタティーボ 6
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!?」

 黒い人が大股に歩み寄ってきて、室長の前髪を鷲掴み、引っ張り上げた。
 勢いで放り出された私が、地面で尻餅をつく。

「何故、お前がアリアを喚べる!? 説明しろ、ルグレット!!」
「! やめて! スイに乱暴しないで!!」

 慌てて立ち上がって。
 後先考えずに、黒い人の腕を抱え込んでしまったけど。
 えーと、どうしよう?
 滅茶苦茶怒ってるっぽい。

 でも、暴力は良くない。
 絶対に良くない!

「いきなり手を上げても問題は解決しません! 説明を求めるなら、まずは話を聴く姿勢を整えてください! 何が知りたいのかを明確にして一つずつ並べていただかないと、こちらとしても説明の仕方に困ります!」

 うわぁーい。
 つい咄嗟に出て来ちゃったよ、苦情対策の基本定型文。
 場合によっては逆に相手を刺激しちゃうから、通常は、もう少し穏やかな口調で、言葉を選び直しながら言わなきゃいけないのに! 私のバカーっ!
 ああもう、ほら。
 黒い人の赤い目が、これ以上ないってくらい吊り上がって……

「おやめなさい、ベゼドラ。ステラさんが仰っている通りです。相手の方を暴力的に威圧しても、まともな意思疎通はできませんよ」

 クロスツェルさんが、穏やかな微笑みで加勢してくれた。

 わーい、ありがとうございますーって……

 あれ?
 ベゼドラさん? の手を、上司殿から離させてくれたのはともかく。
 何故に、私の手を取って、数歩下がられたのでしょうか?

「まずは、貴方とアリアの関係を。それから、アリアがここに来た理由を。貴方が知っているアリアに関する情報をすべて。教えてくださいますか?」

 私の背後に立ったクロスツェルさんが、私の肩に両手を置いて。
 膝立ちになってる室長の前に、わざとらしく立たせた。

 …………これって、もしかして『人質』ですか?
 上司殿が話さないと、私がどうなっても知らないぞーってやつ?

「クロスツェル、さん?」

 まさか、そんなことをする人には見えないけど。
 顔だけで振り向いたら、柔和な微笑みを返してくれた。
 でも、手は外してくれないんですね。そうなんですね。

 男の人って……怖い……。

「ステラは関係ない! その子を巻き込むな!」
「落ち着いてください。冷静に教えていただければ危害は一切加えません。嘘も隠しごともせず、すべてを教えていただければ、決して」

 酷い。
 クロスツェルさん、結構酷い。
 そんな、人畜無害そうな顔してるのに……。

 でも、ベゼドラさんが一歩退いてくれたのは、ありがたいかも。
 もしかして、この為にわざと悪役を演じてくれたのかな?
 そうだと良いなあ〜。

 という、希望的観測。
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