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黒魔術師松本沙耶香 客船篇
11部分:第十一章
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答えた。その声は沈んでいた。
「好きですけれど」
「今は、なのね」
「そういうことです。実はですね」
「よかったら話を聞かせてもらうわ」
「お話をですか」
「ええ、どういったものかね」
 その口元に笑みを浮かべさせての言葉である。それで彼に対して言ってみせたのである。そうしてまた彼に対して言葉を出したのである。
「よかったらね」
「そうですか」
 男はそれを聞いてだ。まずは大きく溜息をついた。カクテルが入ったそのグラスを右手に持ちながらだ。そのうえで沙耶香に対して言ってきたのである。

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