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第一章
黒魔術師松本沙耶香 客船篇
「それが今回の依頼なのね」
「はい」
こう黒衣の女に話していた。
「その通りです」
「そうなの」
ここまで聞いてであった。その黒衣の女は見れば切れ長の奥二重の目を持っている。そしてその目の色は黒檀を思わせる黒で何処か妖しい輝きを放っていた。
その面長の顔は白くまるで雪の様である。引き締まった唇は紅色であり小さい。鼻は高く整った形をしている。
その長い黒髪を後ろで団子にしてまとめている。その為その髪は一見すると短く見える。そしてその髪は絹を思わせるしなやかさと艶を見せていた。
黒いスーツの中から白いブラウスと赤いネクタイが見える。長身に豊かな身体をその中に包んでいる。その美女が話す男の向かい側に座りそのうえで話を聞いているのである。
その美女はだ。話を聞いてから述べたのだった。
「そうね」
「引き受けて下さいますか?」
「面白い話ね」
こう言ってきたのである。
「少なくともその場所はね」
「面白いですか」
「今まで色々な場所を回ってきたけれど」
「そこはないですか」
「船旅は好きよ」
女は微笑んでそれはというのである。
「けれどね。そうした事件の解決として乗り込むのはね」
「それはないと」
「縁だから」
ここでこんな言葉も出て来た。
「事件を解決するその場所もね」
「それも縁ですか」
「そうよ、縁よ」
まさにそうだというのである。
「それもね」
「そうですか。そういうものなのですね」
「人と人との出会いと同じよ」
ここで、であった。女は妖しい笑みを浮かべてきた。妖艶な、しかもそこには思わせぶりなものも含んだ、そんな笑みを相手に向けてきてそのうえで言うのである。
「それはね。縁があれば出会い」
「縁がなければですか」
「永遠に出会うことはない」
まさにそうだと話すのである。
「永遠にね」
「それはよく言われていますが」
「だからよ。縁がなければどうしようもないわ」
また言う美女だった。笑みはその妖しく思わせぶりなままだ。その笑みで語るのである。
「そういうものだからね」
「そしてそれは依頼先もですか」
「そういうことよ。それでその船だけれど」
話は依頼の方向に移った。
「かなり豪華な客船なのね」
「我が国は今までそうした客船の建造はお世辞にも長けているとは言えませんでした」
男はここで少し残念そうに言うのだった。
「ブルジョワとか貴族とかそういう批判が出て来ますので」
「階級社会、いえ格差社会ね」
「はい、そうした言葉も出まして」
「マルクスね」
美女は短いがそれだけでそうした考えを批判したのだった。一蹴という感じである。
「私はその考えはね」
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