第二十七話
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自分の部屋に帰り着いた時には7時を回ったところだった。よけいな事に巻き込まれてずいぶんと遅くなってしまった。途中の弁当屋で二人分
の弁当と豚汁を買っていた。王女が暖かい物を食いたいだろうと思ったんだ。
ここの弁当屋は普通のチェーン店なんだけど、調理するおばちゃんの腕がいいんで、うまいって評判なんだ。店には普段以上に行列ができていたけど、また待つのも楽しみ。
本当は外に連れて行ってあげるのが一番なんだけど、人の多いところに彼女を連れて行くのは危険な気がしたし、彼女は肉体的にも精神的にも
王女は、かなり疲れているように見えたから、まだ休ませてあげることが必要だって思っていたんだ。もう少し元気になったらとっておきの飯屋に連れて行ってあげようとは思っているんだけどね。……もちろん行ける店は予算との相談も必要だけど。
先ほどまで俺の意識の上に上がってきていた邪悪な何かはどこかに消え去っていた。
ドアノブに手をかけて開けようとするより早く扉が開いた。
そして、そこには王女が両腕を組んで立っていた。
「遅い! 今まで何をチンタラやっていたの!! 私はこの世界に来てまだ日が浅いのよ。何をするにもやり方がわからないっていうのに目が覚めたらお前はもういないし、外には出られないし。むさ苦しいお前の部屋で一日過ごさなくちゃいけなかったのよ! おかげで気が狂いそうになるくらいテレビを見せて貰ったわ。お前には本気で感謝してるわ」
いきなりの剣幕に俺はただ嵐が通り過ぎるのを待つしかできなかった。確かに俺が悪いもんな。朝起きたときには寝ていたし、それに夜中に彼女が恐慌状態に陥った時、仕方なかったとはいえ彼女にキスをしちゃったせいもあってなんだか顔を会わせづらかったんだ。だから反論なんてしなかった。ただただ頭を下げてただけ。
「……もういいわ。これ以上お前を責めたところで何も変わらないし」
王女はいろいろとまくし立てていたが、唐突に説教をやめた。彼女のお腹が可愛い音を立てたのだ。
「それよりお腹がすいた……」
顔を赤らめながらつぶやいた。
「ちょうど良かったよ。弁当食べるか? 暖かい豚汁もあるよ」
俺はにっこりと微笑み、包みを彼女に見せた。
部屋に入ると早速弁当を広げての食事となった。
一日中部屋でゴロゴロしてたわりには部屋は片づいている。ゴミもほったらかしになっていないや。ベッドそばのテーブルに飲みかけのペットボトルが一本おいてあるだけだ。
何気なく冷蔵庫を覗いてみると、朝入れてあったコンビニ弁当やヨーグルトはそのままになっていた。
もしかするとずっと寝ていたのかも知れない。……それほど疲れていたんだろうか?
王女を見ると弁当の中身についていろいろ文句を言いながらも食べている。とりあえず
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