9部分:第九章
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第九章
暫く情事を続けた後でだ。沙耶香は服をみにまとってから立ち上がった。真央美はまだ淫らな姿のままで横たわっていた。その整った顔はまだ紅潮していた。
「素敵だったわよ」
「私が素敵ですか」
「とてもね。楽しませてもらったわ」
まだ仰向けに寝ている彼女を見て切れ長の目を細めさせた。
「それじゃあまたね」
「またですか」
「縁があればまた会えるわ」
今はこう言うだけの沙耶香だった。
「それがあればね」
「あればいいですね」
「そうね。さて、それでは」
立ち上がると後ろから黒いコートが飛んで来た。そうしてその袖を自ら通り沙耶香の身についたのであった。そのうえでまた真央美に告げた。
「貴女も次は授業ね」
「はい、そうです」
横たわりながらもその服をまとめながらの返答だった。
「そうですけれど」
「それでは私はこれで」
そのまま足を先に出しての言葉であった。
「去らせてもらうわ」
「これが女の人なのですね」
ようやく上体を起こしながら言う真央美であった。
「この味が」
「そうよ。忘れられないでしょ」
「ええ、本当にまた」
「男もいいけれど女もまたいいものよ」
ここでもどちらも知っているからこその言葉を出してみせたのであった。
「どちらも知ってこそね」
「どちらもですか」
「本当の悦びを知るのよ」
こう言って部屋を後にした。そうして一限目が終わったその学校の中を歩いてだ。一年のある教室の前に辿り着いたのであった。
「ここね」
その教室の前で言った沙耶香だった。
そうして丁度教室から出て来た女生徒の一人に声をかけるのだった。
「ちょっといいかしら」
「はい?」
「この教室に時任忍さんがいるわね」
こうその女生徒に尋ねたのだった。
「その人が」
「はい、そうですけれど」
その女生徒は目を少ししばたかせながら沙耶香の問いに答えた。顔は当然彼女に向けそのうえで見上げている。沙耶香の長身がここでも出ていた。
「時任さんに何か」
「用があるのよ」
うっすらと笑ってこう述べてみせたのだった。
「用がね」
「といいますと」
「あの娘のお母さんに頼まれたことだけれど」
「時任さんのお母さんにですか」
それを聞いて考える顔になる彼女だった。亜由美のことは彼女も、そしてクラスの皆も知っている。沙耶香はこのことも内心で察したのであった。
「それじゃあ何が」
「呼んでもらえるかしら」
その問いに答えずに述べた沙耶香だった。
「時任さんがクラスにいるのなら」
「はい、わかりました」
その押しに負けて詮索を止めて応える女生徒だった。
「それじゃあ」
「ここで待ってるから」
こうして彼女が来るのを待つ沙耶香だった。すると暫くしてまずはその女生徒
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