6部分:第六章
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第六章
「それならね」
「そうですか。有り難うございます」
「報酬のことだけれど」
「はい」
その話もここでするのだった。
「まず半分を前払いでね」
「振り込むのですね」
「そうよ。口座は後で言うわ」
「わかりました」
「そして仕事が終わった時に」
成功か失敗かはもう言うまでもなかった。彼女にとってはそうなのだ。
「後の半分をね」
「それではその様に」
「御願いするわ。さて」
ここまで話してであった。沙耶香は煙草を己の指の中に消した。そうしてそのうえで再び亜由美に身体を寄せてきて囁くのであった。
「言ったわね。夜は長いと」
「ではまた」
「そうよ。抱かせてもらうわ」
瞳の奥に妖しい笑みを浮かべての言葉だった。
「またね」
「ではまた」
「ええ。楽しみましょう」
彼女だけが楽しむものではなかった。それは二人が楽しむものだと。言うのだった。
「この夜をね」
「それでは」
「女だけが知る女の悦び」
声もまた笑っていた。妖しくそれでいて美しいものを含ませて。
「それを楽しみましょう」
そしてまた肌を重ね合わせるのだった。その交わりが終わった次の日だった。沙耶香は赤煉瓦の壁の前にいた。その彼女の周りを同じ方向に学生達が向かっていた。
「おはよう」
「おはよう」
朝の爽やかな日差しの中で明るい笑顔で互いに挨拶をしている。緑と白、それに青を合わせたタートンチェックのミニスカートに鮮やかなコバルトブルーのブレザーに赤いネクタイという制服だった。ブラウスとソックスは白で統一され靴も黒だけであった。
男の子達もいて同じ色のブレザーとネクタイと靴、そしてズボンだった。しかしその数はかなり女の子の方が多い。そうした学校だった。
「女の子の方がずっと多いとなると」
沙耶香はその朝の爽やかさにはそぐわない耽美そのものの口元で述べた。
「いいわね。時間があれば楽しめるわね」
その口元を微かに笑わせての言葉だった。そのうえで学校の中に向かうのだった。
校門では一人の端整にスーツを着た如何にも厳しそうな若い女教師が立っていた。生徒達を見回していたがふと学校の中に入ろうとする沙耶香に気付いて声をかけるのだった。
「お待ち下さい、貴女は」
「時任亜由美さんに頼まれたのよ」
その女教師にこう声を返したのだった。
「それでなのよ」
「時任さんにですか」
「娘の忍さんのことでね」
口元に妖しい微笑をたたえさせてこうも言ってみせたのだった。
「それでだけれど」
「そうなのですか」
「もう少ししたら校長や理事長にも話がいくわ」
教師の中にも階級がある。それをわかっての今の言葉だった。
「だから。わかるわね」
「はい。それでは」
「ええ。それでだけれど」
沙耶香
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