5部分:第五章
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第五章
「これがね」
「そうですか。これがですか」
「いいものでしょ」
沙耶香は横目に彼女を見た。そうしての言葉だった。
「女も」
「はい、とても」
「男もいいけれど女もいいのよ」
両方を知っているからこその言葉だった。それだからこそ言える今の言葉だった。
「それもね」
「そうなのですか」
「それでだけれど」
ここで話を変えてきた沙耶香だった。そうして言う言葉は。
「詳しい話を聞きたいわ」
「娘のことですね」
「貴女のことは大体わかったわ」
亜由美についてはというのだった。
「それはね」
「私のことはですか」
「肌を重ね合わせればそれでわかるのよ」
これも魔術であった。沙耶香はその魔術で彼女のことを知ったのである。肌を重ね合わせそのうえで彼女の心の中にあるものを読んでみせたのである。
「一代で日本を代表する化粧品メーカーミラージュを築き上げたのが貴女だったのはね」
「そのこともですか」
「そうよ。わかったのよ」
微笑はそのままであった。
「それもね」
「本当に魔術が使えるのですね」
「魔術は万能ではないわ」
何故かここでこんなことを言う沙耶香だった。
そうしてそのうえで。今度はこんなことも言うのだった。
「魔術は科学と同じよ」
「科学とですか」
「何かを探求しそして何かを人に与える」
今の沙耶香の言葉はこれであった。
「だから同じなのよ」
「不思議なものではないのですね」
「科学もその原理がわからなければ同じよ」
沙耶香はここでも魔術と科学を同じに語ってみせた。
「不思議なものよ」
「では魔術もまた」
「魔術師はその原理を知る者なのよ」
「それなのですか」
「そうよ。そうした存在なのよ」
そして彼女こそまさしくそれだと。沙耶香は言葉の外に語ったのだった。
彼女の言葉は続く。今度は。
「それでわかったのだけれど」
「はい」
「私を探していた理由は」
「それをですか」
「そうよ。わかったわ」
煙草を口にしながらの言葉だった。
「娘さんの命を助ける為に」
「娘は魔に狙われると聞きました」
十五年前の話だ。彼女はそれを忘れたことはなかった。一瞬たりともだった。
「それで黒い堕天使がそれを救えると聞いて」
「占い師にね」
「はい。その占い師のことは」
「知ってるわ」
一言で答えた沙耶香だった。上体を起こし前を見て煙草を吸ったまま答えたのだった。答えるその姿は一糸まとわぬものだった。その白く大きな胸が露わになっている。形はまるで杯の様である。その美しい胸と白い裸身を闇の中に浮かび上がらせたままでの言葉だった。
「あの人のことはね」
「そうですか」
「あの人の占いならね」
そして沙耶香は言うのだった。
「その
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