暁 〜小説投稿サイト〜
加虐滅魔のメリアルデ ~The-murderer Merry~
プロローグ
[3/4]

[1] [9] 最後 最初
層に霊核()がカットされて入っているではないか。

 ──あぁ、甘そう……。

 あの血を啜ったら、どんな味がするのかしら。きっと、吸血種である『彼女』ならそう言うだろう。

 でも私は違った。化け物、なんて呼ばれることも良く在るけれど、私はれっきとしたただの人間。
 赤い髪と金色の目、他の人より『ちょっと』強靭に動く肉体を包む黒い着物とプロテクター。そして手に持ったサバイバルナイフを除けば、いたって普通の、どこにでもいる女の子。
 お洒落に気を使い、美味しいものを欲し、そして恋に悩む──そんな普通の女の子。

 そう、恋。恋愛。like。love。ああ、なんて甘美な響き。きっと濃厚なチョコレートよりもずっと甘い。

 今だって、そう。私は大好きな『彼』の為にここにいる。
 私の『彼』はすっごく弱くて脆いから、ちょっと強い私が守ってあげなくちゃ。私はこの事に関してほど、自分の力を喜んだことはない。
 私の『彼』は、今目の前で悶え苦しむ霊体みたいな《人外》にすぐ気に入られちゃうから、誰にも渡さないように守ってあげなくちゃ。私はこの事に関してほど、自分の環境に感謝したことはない。

 私は普通の人より、『ちょっと』強い。
 私の知り合いは普通の人達より、『ちょっと』ズレた場所にいる。

 例えばほら、見えないものが見えるとか。ナイフで石が切れるとか。車に跳ねられても無傷とか。
 例えばほら、幻獣使いの女性とか。悪魔と契約した伏魔師(エクソシスト)とか。吸血鬼のお姫様とか。

 でもこのくらい、もっと凄い人から比べたら、なーんてことない常識だと思う。だって私はそれ以外、何の変鉄もない女の子だもの。


 ああ、最後の霊核を砕かれて、目の前の霊体が消えていくわ。しゅわしゅわしゅわしゅわ、ラムネみたい。泡になって消えていく。まるで大気という海に溶けて消える、人魚姫の様。

 でもね、そんなきれいな役割は、あの子達には相応しくないわ。だって『彼』を狙う、悪い悪い化け物だもの。


 ナイフの血糊が消えたなら、今日の仕事は一旦終わり。後は『彼』がお家に帰って、私もお家に帰るだけ。
 いつか一緒の家に住んで、一日中ずーっと守っていてあげたいけれど、残念だけど今は無理。

 だからせめて、家中の至るところに施したカウンターで、『彼』の事を守ってあげるの。風水術にのっとって、あらゆる鬼門に伏魔の護符。それだけじゃなくて、霊的存在が悪意をもって接したら、すぐにそれを殺す術。

 もちろん、悪意をもって『彼』に近づいているかなんて、単純な術じゃ分からないわ。だからそれは、()()()()()()()

 あ、『彼』が見えた。黒い髪に、シンプルな服。ああ素敵、とっ
[1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ