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加虐滅魔のメリアルデ ~The-murderer Merry~
プロローグ
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たのが切っ掛けだった。
 青ざめてまるで死人の様だったあのときの彼女は、わりと本当に危なかったと思う。放っておけば消えてしまうのでは──そう思って、最寄りの病院に連れていったのだ。

 幸いそこの女医さん…赤毛で眼鏡のスタイルのいい人だった…が『貧血よ』と診断した通り、直ぐに彼女は回復した。
 僕が病院に運んだ、と言うことを聞いたのか、少女は僕に、何かお礼がしたいと言って、三日後…つまり今日…、この大通りの子洒落たカフェを待ち合わせ場所に指定して、焦る僕を完全無視して嵐のように去っていった。

 ──で、お礼というわりには彼女が楽しんでるだけ、という、この状況に行き着くわけ。

「えーっと……あの、次、オレンジソースのも頼んで良いですか!?」
「い、いいけど……倉名さん、よくお腹一杯にならないね」
「女の子のおなかは、甘いものなら幾らでも入るように出来てるんです……っというか光明君、私の事は『悠夏』って呼んでください、って言ったじゃないですか」
「うぇえ!? ご、ごめん……」

 ぷくー、と可愛らしく頬を膨らませる彼女……倉名(くらな)悠夏(ゆうか)は、僕……秋原(あきはら)光明(みつあき)に、何の故にか名前呼びを強制するのだ。何よりも大事なことなのだ、と、今日最初にそう言っていた。

「まぁ、兎に角次のケーキ頼みましょう! 光明君も好きなだけ食べてください! 奢りますよ!」
「ええぇ? わ、悪いよそんなの……」
「もぅ! お礼をしに来たんですよ、私は!」


***


「ふーん」
「……どうしたんですか、先輩?」
「……なるほど、『そう言う手』のタイプか……亡霊(ゴースト)、というよりかは幽霊(レイス)……いや、星霊(アストラル)か?」
「……?」
「いや、変な気配を感じたからね」
「……変なのは貴方の頭の中です、先輩」
「おぅふ」


***


 ──目の覚めるような赤。真紅。まるで、雪のように白いクリームの生地の上に垂らされた、苺のソース。

 様な、という表現になるのは、ここにそんなものは存在しないから。クリームとスポンジの代わりに、コンクリートの地面。その上に垂らされた苺のソースの代わりに、大地にぶちまけられた毒々しい鮮血。そして苺の代わりに見るも無惨、まるで挽き肉のようにバラバラにされた、肉体。
 ケーキの代わりに解体されて、そこに転がっているのは──半透明に透き通った、ドレスを纏った化け物達。一瞬ただの女に見えるが、よくよく見れば複雑に絡んだ骨や、脈打つ内臓が透けている。

 さくり、と差し込まれた銀色のサバイバルナイフが、残った最後の化け物(ケーキ)を両断した。なんと間にまで三層に分かれて内臓(クリーム)が挟まっている。それどころか、それぞれの
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