4部分:第四章
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第四章
「どうするのかしら」
「それでは」
それを聞いてすぐにだった。彼女はそれに静かに頷いた。そうして沙耶香が彼女を連れた場所は。そこはあるホテルの一室だった。
国賓達もよく泊まるそのホテルのスイートルームだった。見るからに豪奢な部屋だった。青と白のアラベスク模様の絨毯と四つの黄色いソファーの中央には黒檀のテーブルがあり窓際にも席が設けられている。そこからは東京の夜景が見える。黒い中に白や赤、青の様々な光が見える。そしてその光達が動くのも見える。
天井には白く丸い光を放つ大きな灯りがあり液晶テレビもある。そして白い壁には絵がある。それはドイツの街を描いたものだった。
その部屋の奥には大きな白と赤のダブルベッドが見える。亜由美はそこに案内されたのである。
「ここは」
「見ればわかると思うけれど」
沙耶香はここでコートを脱いだ。黒いコートを脱ぎそれをコートがけにかける。そうしてそのうえで亜由美に顔を向けてだ。言うのであった。
「それでだけれど」
「それで?」
「話を聞きたいのよ」
目を細めさせての言葉だった。そのうえでまた妖しい笑みを向けていた。
「詳しいお話をね」
「お仕事のことをですね」
「そして」
言いながら近寄りだった。彼女の上着に手をかけてきたのであった。
亜由美はそれを受けてだった。びくり、となった。思わず身体を引っ込めそうになる。しかしそれよりも前に沙耶香は妖艶な笑顔で彼女に言うのであった。
「怯える必要はないのよ」
「けれど私は」
「貴女にはもう御主人はいないわ」
このことを彼女に言うのだった。
「そうよね。貴女にはもう」
「それはそうですけれど」
「じゃあいいわね」
また言う沙耶香だった。
「これから」
「ですがこれは」
「女同士だからかしら」
「女性が女性に身を任せるのは」
「それの何処が悪いのかしら」
タブーを楯に逃げようとする彼女にさらに言う。あくまで逃がそうとしない。それはあたかも花が獲物を蜜で誘い捕らえる様な。そうしたものだった。
そしてだった。さらに声を寄せる沙耶香だった。
「同じなのよ」
「同じ」
「そうよ。男性が女性に身を任せるのと同じよ」
「それと同じだと」
「それにしてはいけないと思っているわね」
このことも問うてみせたのだった。
「そうね」
「ええ、ですから」
「では余計にいいのよ」
「余計に、ですか」
「そう、余計にね」
誘惑の言葉だった。そして笑みもだ。まさに誘惑の言葉を出しそのうえで亜由美をその禁断の世界へと誘っていくのだ。まさにそうするのだった。
「さあ。だから」
「ですが」
「楽しい夜を過ごしましょう」
こう言ってだった。唇を近付けてだった。その唇を奪う。
唇と唇を重ね合わせ
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