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短編集
艦隊これくしょん

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 「いい、雨だね」

 白露型駆逐艦2番艦『時雨』が海面に横たわり、雨の降る空を見上げる。
 彼女の周囲にはバラバラになった艤装が浮き、彼女自身の身体も傷ついていた。

 「ははっ、冬なのに暖かいや」

 力なく笑う時雨。

 「これで………これで良かったんだ。皆を守れたなら」

 目に浮かぶのは、西村艦隊のメンバー、鎮守府の仲間たち、そして、自分を愛してくれた提督の姿。
 悔いはなかったと彼女は笑った。
 だが、すぐに悲しみに満ちた表情に変わる。

 「ああ、でも、皆ともっと一緒に居たかったなぁ」

 着任してから、今に至るまでの楽しかったこと、悲しかったことを振り返りながら時雨は冷たくなってきた自分の体を抱きしめる。
 すると、首元からチャラッという音が聞こえた。
 首元にあるものを持ち上げる。

 「ごめんね、提督。もっと提督と一緒に幸せな生活をしたかった。もっと提督を感じたかった……。提督の赤ちゃん……、産みた……かった」

 両目を手で覆い、時雨は静かに泣いた。

 「嫌だ!嫌だよぅ!死にたく…ない!提督の所に帰りたい、帰りたいよ!」

 涙を流し慟哭する時雨。
 彼女の願いは、叫びは雨に溶け、消えていった。



 −願わくば、来世でもまた提督と一緒に居られますように−

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