30.金で買えるか買えないか
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立国エイゼンベルグまで足を運ぶことになる。自分と二人きりよりはオラリオ内で確かな地位にあるあの神の下の方が安全、と考えての事だった。
なお、アニエスはその後独自の行動を始めていることをナジットはまだ知らない。
ともかく、ナジットはその手紙の主と対面し、意外な事実を知ることとなった。
「……巫女をガテラティオに連れ込めぬ、だと?」
「左様でございます。あまり表ざたには出来ぬ故にこのような形で伝える事となったことをお許しください」
バイソンの角を連想させる独特の髪形をした大柄な男は、その厳つい顔で頷く。
「それは、態々話し合いの場所を中立国に選んだこととも関係が?」
「ええ、大いに。特に正都の息がかかった場所と神の直轄する場所は危険でした。本来はノルエンデも視野に入れていたのですが……あの騒ぎでしたからね」
「噂には聞いた。大地の崩落が起きて村一つが全滅したとか……」
「ええ。それでこの地のこの場所を……」
『ねぇみんなー!!わたしの歌は〜〜!?』
「「「「「ミ・ナ・ギ・ル〜〜〜〜〜!!!」」」」」
唯でさえ温暖な地方なのにその空気を更に蒸し暑くする男どもの咆哮に顔を顰めながら、ナジットはその劇場で聞いたこともない妙な歌を聞かされていた。古来よりこのような劇場などは周囲の事を気にも留めない客が多いため密会の場としては向いているが、なにもこんな喧しいものでなくともいいだろう。
ナジットは名前くらいしか聞いたことがないが、ステージの上で歌って踊る金髪の女こそが今大陸中で大人気のアイドル『プリン・ア・ラ・モード』らしい。青いフリフリドレスにウサ耳という珍妙な格好をしてマイク片手に踊っている姿からはどことなく不思議な力を感じるが、ナジットには何がいいのかさっぱりわからない。
もっとも、それを口に出した途端周囲のファンを敵に回しそうなため敢えて黙っているが。
男は隣の席に窮屈そうに座りながら笑っているが、さっきの奇妙な合いの手に彼もノリノリで参加していたのをナジットは横目で見ていた。
「いえいえ……実はわたくし、プリン・ア・ラ・モード様の大ファンでしてね……休暇を取ってはよくライブに参加するのです。つまり、これを口実にしてしまえば周囲には怪しまれな……」
『みんな〜!わたしがピンチの時は守ってくれるぅ〜〜!?』
「「「「「プリンちゃん、命ぃぃぃぃぃぃッ!!!」」」」」
「…………おい」
「ご、ごほん。では話を続けましょう」
(まさかこの男、単にこのライブに参加したかっただけなのでは……?)
大の大男がキラキラ光るうちわを持って絶叫している姿に気圧されつつ、ナジットは話を促す。
「ガテラティオ内部に不穏な動きがあります。恐らくは正教とエタルニアの和平に未
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