30.金で買えるか買えないか
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褪色の世界に次々と現れる不思議な魂たち。
閉塞を壊すように動き出した忌々しい影に呼応するように、彼らはダンジョンに集った。
もしかしたら、この世界に新たな英雄譚が生まれる予感のようなものを感じていたのかもしれない――とフレイヤは後になって語る。
= =
冒険者なんて大嫌いだ。
約束を破って報酬を横取りなんて当たり前。力に物を言わせて自分の欲しいものを奪っていく。
困っていても助けてくれない癖に、自分が困っている時だけ散々利用しようとする。
挙句、人を罵って隅に追いやる癖に、逃げ出すことは決して許そうとしない。
屑ども、と侮蔑を含んだ声で一言漏らす。
もし自分が小人族でなければ――あんな親の元に生まれなければ――こんなにも惨めに簒奪され続ける運命に選ばれることはなかったのに。
『荷物運び』――非力な自分が唯一出来る、戦えない冒険者の辿り着く最底辺。
相手にケチでもつけようものならボールのように蹴り飛ばされ、口答えするなと脅されるだけだ。
お前は何もしてないから報酬なんて必要ない。
俺達が守ってやったんだから、金を払え。
役に立たないなら精々囮にでもなれ。
心底こちらを見下した顔で、粗暴で粗野で薄汚い冒険者たちは下卑た笑い声をあげる。
なら――別にこちらもそれで構わない。
そちらがそうなら、それはそれで――扱いやすい。
本当に考えていることが丸わかりで、隙だらけで、驚くほど間抜け。
知性の欠片も感じられない相手なら、こちらはそれなりの対応をしてやるだけだ。
自由になるんだ。
自分本位で他人の金を貪る愚か者共など振り切って、本物の自由に――と、その時、路地の角から突然人影が飛び出た。全速力だったために避け損ない、どん、と誰かにぶつかって、反動で体が投げ出される。
「きゃあっ!?」
「うおっ!?チッ、気を付けろクソガキぃ!!ああ、イライラするぜ……!!」
ぶつかった男は、見覚えのないフードの男だった。
砂漠の民特有の服装から察するにナダラケス地方の出身だろうか。浅く焼けた肌と長身に、山狗のようにギラついた目が印象的だった。
よりにもよってこんな時に――!と歯噛みする。余りにも間抜けなミスだった。
急いで平謝りして逃走しようとして――背後から別の男の声。
「チョコマカ動き回りやがって……!もう逃がさねえぞオラァ!!」
「くっ……追い付かれた……!!」
間抜けな冒険者を、非力なサポーターを演じて油断させたうえで金やアイテムをかすめ取る。
自分の魔法と組み合わせることでずっと続けてきた、彼女の唯一人より優れた所。
だが、今日。目の前の目つきの鋭い
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