暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
現実世界
第148話 彼女の刃
[1/12]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

 夜の闇の中、降り注ぐ雪を肩に積もらせながら、和人は走り続けた。

 アスファルトには、薄く雪を纏いつつある。ペダルに掛かる負荷も上がってくるが、和人は車体を更に加速させる様に踏み抜き、蹴飛ばした。これまで、辿ってきた道に比べれば、この程度の道は随分とぬるいものだ。この先に、目指した未来が待っているのだから。
 ……待っていると信じているから。

 そして、やがて見えてきた。
 前方にあるのはくろぐろとした巨大な建造物。その建造物の灯りはもう殆ど消え落ち、ドクターヘリが着陸する為の青と赤の誘導灯が、黒い建造物を彩っていた。

 後、ほんの数100mの距離。最後の坂を登りきると、高い鉄柵が見えだした。後は鉄柵沿いに、走っていけば正面ゲートが見えてくる。


――……後、少し……、少しだ。


 早る気持ちを必死に抑えながら、吹き抜ける冷気を切り裂く勢いで自転車を走らせる。正門は、もう固く閉ざされている為、和人は、正門前を通過、パーキングエリアまで走り、そこから職員用に解放されている小さなゲートがある。そのゲートから敷地内へと乗り入れた。

 駐輪場まで行かず、和人は駐車場の橋に自転車を停め、その鍵を施錠するのももどかしく、乗り捨てる様に、走り出した。夜の駐車場は、まったくの無人だ。雪が降りしきる中で。……世界が完全に雪に閉ざされてしまう前に、明日奈に会いたい。

 この手で抱きしめたい。

 和人の中にある求めるものは、この病院の姿を捉えてからは、それ一色になっていた。やがて、恐ろしく広い病院内の駐車場を半分ほど横切った所で、背の高いバン、そしてセダン車が見えてきた。
殆ど蛻の殻である駐車場の中で唯一の自動車だ。


――……こんな時間に…?


 と、和人は一瞬思ったが、現に自分は今、こんな時間だが病院へと来ている。それにおそらく隼人も来る筈だろう。だから、直ぐに思考から、削除し 横切ろうとした時だ。

「あっ……」

 バンの後ろからスッと出てきた人影と和人は衝突しそうになった。その人影を躱そうとしたその瞬間。辺は駐車場の灯りが少々点っているとは言え、まだまだ暗い。そんな闇の中でも、はっきりと見えた。それが、生々しい金属の輝きだと理解したのは……。

「―――ッ!?」

 その直後、和人の右腕……に異様な違和感を感じた時だった。その違和感は、直ぐに鋭い熱感となり、右腕から走った。びっ!≠ニ言う何かが避ける音も耳に残っていた。それは、和人が来ていたジャケットが裂かれる音だったのだ。

 突然の事に、思考が纏まらず、和人は白いセダン車のリア部に衝突してしまったが、どうにか踏みとどまって、その影を見ようとした。間違いなく、原因は先ほどの影。
 影はゆっくりと、不気味だと思える程、ゆ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ