第2部
第5話 野分の提督観察日記
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
不知火も夕立も、嫌な汗がダラダラと全身を伝って衣服を濡らした。
そう、これは見てはいけないモノだったのだ。
ここで踵を返し、日常へ戻ればいい。
今なら誰もこの日記を見た事を知らない。
「私達は何も見なかった、そうですね」
「うん、何も見なかったっぽい」
「へぇ、何を見なかったんですか?」
「それは勿論野分のにっ………………き……」
瞬間、部屋の中が凍り付いた。
嫌な寒気が2人の背後から吹きつけてくる。
まだ夏だというのに、カタカタと身体が震えた。
「なんていけない姉さんでしょうか。
妹の日記を盗み見るなんて……。
そうは思いませんか、夕立さん?」
「あ、あ、あああああ……」
「不知火姉さん、野分≠フ日記を勝手に見るなんて、そんな事……赦されると思ってるんですか?」
すらりと背後から2人の顔に手袋をはめた手が伸びてくる。
手は2人の?や顎を撫でながら、ゆっくりと眼球の前で止まった。
「は、……ひぃ…………」
「の、のわ、のののわき……ちゃ……」
「他人の日記を盗み見るような目なんて、必要ア リ マ セ ン ヨ ネ ?」
「「ひぃぎゃあああああああああああああああああああああああああッ??」」
その絶叫は艦内に留まらず、鎮守府中に響いたという。
???
深夜 リンドヴルム
提督執務室
「しかし、おかしな事もあったもんだ、なんで部屋の前で泡吹いて突っ立ってたんだ、あの2人?」
今日の提出された書類をあらかた片付けた俺、神宮司一葉は、野分の淹れてくれた紅茶を飲みながら、疑問を口にした。
昼過ぎ、鎮守府中に響いた絶叫の後、執務室の前で棒立ちのまま気絶していた不知火と夕立が発見され、一時騒動となった。
2人の意識が回復した後で問い質したものの、何があったのか記憶が全くないそうだ。
身体的に問題も無く、白昼夢でも見たのだろうという結論に至り、その場で解散となった。
「きっと怖い夢でも見たんですよ」
「怖い夢……ねぇ……」
野分が紅茶のお代わりをカップに足しながら言った。
ま、身体的に問題がなかったのであれば、深く追求する必要も無いだろう。
「ん? 野分、紅茶の淹れ方上手くなったな」
「え、本当ですかっ??」
「ああ、凄く美味いよ。
香りもいいし、リーフもきめ細かい。
喫茶店で出る紅茶より好きだよ」
「ありがとうございます、司令っ!」
紅茶を褒められた野分が嬉しそうに笑う。
最近は表情が硬くなっていた様に思っていたが、そうでもなさそうで安心した。
「さて、今日は久しぶりに早く片付いたし、早く寝るかな」
「あ、あの……野分、お伴します」
「え? あ、いや……まぁいいか
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ