第5部 トリスタニアの休日
第6話 きつね狩り
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色が違う。
貴族なのだろう。
「動くな!」
アニエスは剣を突き付けたまま、腰につけた捕縛用の縄をつかみ、鉄の輪のついたそれで男の手首を縛りあげた。
破ったシーツの猿轡をかませる。
そのころになると、なにごと?と宿の者や客が集まり、部屋をのぞき込み始めた。
「騒ぐな!手配中のこそ泥を捕縛しただけだ!」
宿の者はとばっちりを恐れ、顔をひっこめた。
アニエスは小姓がこの男に届けたと思しき手紙を見つけ、中を改める。
微笑を浮かべ、それから机の中や、男のポケットなどを洗いざらい確かめる。
見つかった書類や手紙をひとまとめにした後、一枚ずつゆっくりと読み始めた。
「この男は何者なの?」
「アルビオンのネズミだ。商人のようななりをしてトリスタニアに潜み、情報をアルビオンへと流していたのだ」
「じゃあこいつが……、敵の間諜なのね。すごいじゃない。お手柄だわ!」
「まだ解決していない」
「どうして?」
「親ネズミが残っている」
アニエスは一枚の手紙を見つけると、じっと見入った。
それは、建物の見取り図だった。
いくつかの場所に印がついている。
「なるほど……。貴様らは劇場で接触していたのだな?先ほど貴様のもとに届いた手紙には、明日例の場所で、と書かれている。例の場所とは、この見取り図の劇場に間違いないか?どうなんだ」
男は答えない。
じっと黙ってそっぽを向いている。
「答えぬか……。貴様の誇りと言う訳か」
アニエスは冷たい笑みを浮かべると、床に転がった男の足の甲に剣を突き立てて床に縫い付けた。
猿轡の中で、男が悶絶する。
その顔に、ベルトから抜いた拳銃を突き付ける。
「二つ数えるうちに選べ。生か、誇りか」
男の額に汗が浮かんだ。
ガチリと……、アニエスが撃鉄を起こす音が響いた。
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