第5部 トリスタニアの休日
第6話 きつね狩り
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んだ。
「似合うぞ」
アニエスは視線を二階からそらさずにルイズに言った。
声はやはり女だが、黙っていると短い髪のせいか凛々しい騎士のいでたちを見せる。
ルイズはつい、頬を染めた。
小姓はすぐに部屋から出てきた。
するとアニエスはルイズを引き寄せた。
あ、という間もなく、唇を奪われる。
じたばたと暴れようとしたが、アニエスは強い力でルイズを押さえつけているので、身動きが取れない。
小姓は唇を合わせるアニエスとルイズにちらっと一瞥をくれたが、すぐに目をそらす。
騎士と愛人の酒場女との接吻。
屋敷の壁にかかった絵画のように、ありふれた光景だ。
小姓は出口から出ていくと、来た時と同じように馬にまたがり、夜の街へと消えていく。
やっとそこでアニエスはルイズを解放した。
「な、なにすんのよ!」
顔を真っ赤にしてルイズが怒鳴る。
相手が男だったら今頃杖を引き抜いて吹き飛ばしているところだ。
「安心しろ。私にそのような趣味はない。これも任務だ」
「私だってそうよ!」
それからルイズは去っていった小姓を思い出した。
「後をつけなくていいの?」
「もう用はない。あの少年は何も知らぬ。ただ手紙を運ぶだけの役割だ」
アニエスは、小姓が入っていった客室のドアの前に、足音を立てぬよう注意しながら近づく。
そして、小さな声でルイズに問うた。
「……お前はメイジだろ?この扉を吹き飛ばせぬか」
「……ずいぶん荒っぽいことするのね」
「……鍵が掛かっているはずだ。やむを得ん。ガチャガチャやってる間に逃げられてしまうからな」
ルイズは太もものベルトに差した杖を引き抜くと、呼吸を整え、短く一言『虚無』のルーンを口ずさみ、杖をドアへ振り下ろした。
エクスプロージョン……、ドアが爆発し、部屋の中へと吹き飛ぶ。
間髪入れず、剣を引き抜いたアニエスは中へ飛び込んだ。
中では商人風の男が、驚いた顔でベッドから立ち上がるところであった。
手には杖を持っている。
メイジだ。
男は相当の使い手らしく、飛び込んできたアニエスにも動じず、杖を突き付け短くルーンを呟く。
空気の塊がアニエスを吹き飛ばす。
壁にたたきつけられたアニエスにとどめの呪文を打ち込もうとした時……、ルイズが続いて入ってくる。
ルイズのエクスプロージョンが男を襲う。
男は目の前で発生した爆発で、顔を押されて転倒した。
立ち上がったアニエスが、男の杖を剣でからめとり、手からもぎ取る。
床に転がった杖をルイズが拾い上げた。
アニエスは男の喉元に剣を突き付けた。
中年の男だ。
商人のようななりをしているが、目の
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