第5部 トリスタニアの休日
第6話 きつね狩り
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。ですから……、罠をしかけましたの」
「罠?……なるほど、それでエサはお前と言う訳か」
「ええ、明日になれば……、きつねは巣穴から出てきますわ」
ウルキオラは尋ねた。
「キツネというのはアルビオン関係者か?」
「ええ、アルビオンへの内通者です」
アニエスとルイズは、馬にまたがったまま、リッシュモンの家のそばの路地で息を潜めていた。
雨は小雨に変わったが……、体が冷える。
アニエスはルイズに自分が着ていたマントを羽織らせた。
「で、事情って何よ」
「ネズミ捕りだ」
「ネズミ捕り?」
「ああ、王国の殼倉を荒らすばかりか……、主人の喉笛を噛み切ろうとする不遜なネズミを狩っている最中なのだ」
わけがわからずに、ルイズは尋ねる。
「もっと詳しく説明して」
「今はこれ以上説明する暇がない。しっ!……来たぞ」
リッシュモンの屋敷の扉が開き、先ほどアニエスの馬の轡をとった若い小姓が姿を見せた。
十二、三歳ほどの赤いほっぺの少年である。
カンテラを掲げ、きょろきょろと辺りを心配そうに見まわした後、再び引っ込み馬を引いて現れた。
小姓は緊張した顔でそれに飛び乗ると、カンテラを持ったまま走り出した。
アニエスは薄い笑みを浮かべると、カンテラの明かりを目印にその馬を追い始めた。
「……何事?」
「始まった」
アニエスは短く答える。
夜気の中を、小姓を乗せた馬は早駆けで抜ける。
主人に言い含められたのか、よほど急いでいるようだ。
少年は辺りを見回す余裕さえなく、必死に馬の背にしがみついている。
アニエスはつかず離れずの距離を取りながら、後をつけた。
小姓の馬は高級住宅街を抜け、いかがわしい繁華街へと馬を進めていく。
辺りは未だ女王捜索隊と、夜を楽しむ酔っ払いであふれている。
チクトンネ街を抜け、さらに奥まった路地へと馬は消えた。
路地の入口に消えると、アニエスは馬を降り、路地をのぞき込む。
厩に馬を預け、小姓が宿に入ったことを確認すると、アニエスも宿へと向かった。
馬を放り出し、追いかけながらルイズが問う。
「いったい、なにが起こってるのよ」
アニエスは答えない。
宿に入り、一階の酒場の人込みをかき分け、二階へと続く階段を上る小姓の姿を見つけた。
後を追う。
階段の踊り場から、アニエスはルイズに耳打ちをする。
「マントを脱げ。酒場女のように、私になだれ掛かれ」
わけがわからぬままに、ルイズはマントを脱ぎ捨てると、アニエスの言うとおりにした。
そうすると、情人といちゃつく騎士の姿が出来上がる。
酒場の喧騒に、その姿はよく溶け込
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