第5部 トリスタニアの休日
第6話 きつね狩り
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子は優しいから、そんなことはできないでしょう。ですから……」
ウルキオラはため息をついた。
「お前は女王だ。上に立つものは自分の意思で行動しなければならん」
アンリエッタは俯いた。
ウルキオラはふっと不敵に笑みを浮かべた。
「だが、もしお前が誤った行動ををしたならば斬るとしよう。ウェールズとの約束もあるしな」
アンリエッタは顔を上げ、ウルキオラを見つめた。
そのとき……。
ドンドンドン!
と、扉を激しく叩かれた。
「開けろ!ドアを開けるんだ!王軍の巡邏のものだ!犯罪者が逃げて、順操りに全ての宿を当たっている!ここを開けろ!」
ウルキオラとアンリエッタは顔を見合わせた。
「私を捜しているに違いありません」
「やり過ごす。黙れ」
こくりと、アンリエッタは頷いたが……。
そのうちに、ノブが回され始めた。
しかし……、鍵が掛かっているので開けられない。
がちゃがちゃ!とノブが激しく揺れた。
「ここを開けろ!非常時故、無理やりにでもこじ開けるぞ!」
バキッ!と剣の柄か何かで、ドアノブを壊そうとする音が聞こえてくる。
「いけませんわね」
アンリエッタは決心したような顔で、シャツのボタンをはだけた。
「どうするつもりだ?」
驚く声もあらばこそ、アンリエッタはウルキオラの唇に自分のそれを押し付けた。
いきなりの激しいキスである。
なにがなにやら動揺しきったウルキオラの首に腕を絡ませると、アンリエッタはそのままベッドへと押し倒した。
続いてアンリエッタは目をつむると、熱い吐息と舌を、ウルキオラの口に押し込んできた。
アンリエッタがウルキオラをベッドに押し倒すのと、兵士がドアノブを叩き壊し、ドアを蹴破ったのが同時であった。
二人組の兵士が見たものは……、男の体にのしかかり、激しく唇を吸っている女の姿であった。
女は兵士が入ってきたことにも注意を払わず夢中になっている。
情愛の吐息が、二つの唇の隙間から漏れ続けている。
兵士たちはじっとそんな様子を見ていたが……、そのうちに一人が呟いた。
「……ったく、こっちは雨の中捕り物だってのに。お楽しみかよ」
「ぼやくなピエール、終わったら一杯やろうぜ」
そして、バタン!とドアを閉め、階下へと消えていった。
ドアノブの壊されたドアが、軋んでわずかに開く。
アンリエッタは唇を離したが……、兵士たちが宿の外に出て行っても、じっと潤んだ目でウルキオラを見つめ続けた。
咄嗟のアンリエッタの行動にウルキオラはすっかり驚いていた。
今夜の行動はいざとなれば己の身体を犠牲にできるような、そんな強い思いがあることを感じた。
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