第5部 トリスタニアの休日
第6話 きつね狩り
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がね。お会いできて光栄至極。馬を貸すわけには参らぬが、事情は説明いたそう。あなたを撃ったら陛下やあなたの使い魔殿に恨まれるからな」
アニエスはルイズに手を差し伸べた。
軽々と、華奢な女とは思えぬ鍛えきった力でアニエスはルイズを馬の後ろに引き上げる。
「あなたは何者?ウルキオラを知ってるの?」
アニエスの後ろにまたがったルイズは尋ねた。
「ほう。貴殿の使い魔殿はウルキオラというのか。私は陛下の銃士隊隊長のアニエスだ」
ルイズはさっき兵隊から聞いた『銃士隊』が飛び出たので、激昂した。
「あなたたちはいったい何をしていたの!護衛を忘れて、寝てたんじゃないの!おめおめと陛下をさらわれて!」
「だから事情を説明するといっている。とにかく陛下は無事だ」
「なんですって!」
アニエスは馬に拍車を入れた。
駆けだす。
降りしきる雨の中、二人は闇へと消えていった。
木賃宿のベッドの上に腰かけたアンリエッタは、ウルキオラの腕の中で目をつむり、震え続けていた。
ウルキオラはどうすればよいのかわからず、ただアンリエッタの肩を抱くばかり。
雨が小雨に変わる頃、アンリエッタはやっと落ち着いたらしく、無理に笑顔を作った。
「申し訳ありません」
「気にするな」
「不甲斐ないところを、見せてしまいましたね。でも、またあなたに助けられた」
「また?」
「そうです。あの夜私が……、自分を抑えられずに、操られていたウェールズ様と行こうとしたとき……、あなたは止めてくださいましたね」
「ああ」
「あなたはあの時おっしゃってくださった。殺すと。それは違うと。愛に狂った私に、冷静になれと」
「言ったな」
今になって、なぜあそこまでアンリエッタを制止したのか疑問に感じた。
「それでも愚かな私は目が覚めませんでした。あなた方を殺そうとした。でも、あなたはその私が放った愚かな竜巻をも止めてくださいました」
アンリエッタは目をつむった。
「あのとき、実はほっとしたんです」
「どういう意味だ」
「自分でも気づいていました。あれは私の愛したウェールズ様ではないと。本当は違うと。私はきっと……、心の底で、誰かにそれを言ってほしかった。そして、そんな愚かな私を誰かに止めてほしかったに違いありません」
切ない息を漏らすと、アンリエッタは言葉をつづけた。
諦めきったような、そんな声であった。
「だからお願いしますわ。ウルキオラさん。私が……、何か愚かな行いをしそうになったら……、あなたの剣で止めてくださいますか?」
「なんだと?」
「そのときは私を遠慮なく斬ってくださいまし。ルイズに頼もうかと思いましたが、あの
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