第5部 トリスタニアの休日
第6話 きつね狩り
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屋敷の外に出たアニエスは、小姓から馬を受け取った。
鞍嚢の中を探り、中から黒いローブを取り出すと、鎖帷子の上に羽織り、フードを頭からかぶった。
それから拳銃を二丁取り出し、改める。
雨で火薬が濡れないように注意しながら、拳銃に火薬と弾を詰めた。
火皿の上の火蓋と、撃鉄の動きを確認し、火蓋を閉じてベルトにたばさむ。
火打石式の新型拳銃である。
剣の鯉口を切り、戦支度が完全に整うと馬にまたがった。
そのとき……、雨の中から誰かが駆けてきた。
チクトンネ街の方から現れたその少女は、馬にまたがったアニエスに気づくと、駆け寄ってきた。
雨の中を駆けてきたので、酷いなりであった。
もとは白いキャミソールは泥と雨で汚れ、走りにくい靴を脱ぎ捨ててきたのか裸足であった。
「待って!待った!お待ちなさい!」
何事?と思い、アニエスは振り向く。
「馬を貸してちょうだい!急ぐのよ!」
「断る」
そう言って駆けだそうとしたアニエスの馬前に、少女は立ちふさがる。
「どけ」
言ったが、少女は聞かない。
なにやら一枚の羊皮紙を取り出すと、アニエスの前に突き付けた。
「私は陛下の女官よ!警察権を行使する権利を与えられているわ!あなたの馬を陛下の名において接収します!ただちに下馬しなさい!」
「陛下の女官?」
アニエスは首を傾げた。
見たところ、酒場の女のようななりだ。
しかし、雨に汚れてはいたが、その顔立ちは高貴さが見て取れる。
アニエスはどうしたものか、と一瞬迷った。
ルイズはアニエスが馬から降りないので、業を煮やしたらしい。
ついに杖を引き抜いた。
ルイズのその仕草で、アニエスもとっさに拳銃を抜いた。
二人は杖と拳銃を突き付けあったまま、固まった。
ルイズは低い震える声で言った。
「……私に魔法を使わせないで。まだ、慣れてないのよ。加減ができないかも」
拳銃の撃鉄に指をかけ、アニエスも告げた。
「……この距離なら、銃のほうが正確ですぞ」
沈黙が流れる。
「名乗られい。杖は持たぬが、こちらも貴族だ」
アニエスが言った。
「陛下直属の女官、ド・ラ・ヴァリエール」
ラ・ヴァリエール?その名には聞き覚えがあった。
アンリエッタとの会話の中で、幾度となく聞いた名だ。
「では、あなたが……」
アニエスは拳銃を引っ込めた。
目の前でつ杖を構えて震えるこの少女が……、噂の陛下の親友というわけだ。
桃色がかった髪をした、こんな年端もいかぬ少女が……。
「私を知っているの?」
ルイズも杖を降ろし、キョトンとした顔になった。
「お噂はかね
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