3-1話
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も、全く速度を落とす事なく木々の間を縫うように森を抜けていく。
懐に手を忍ばせながら、身体を前のめりに沈めた体勢で地面を蹴って疾駆する。
視界が緑一杯で景色が目まぐるしく迫るが、感覚は木々の一本一本の場所を掌握しているから、この身が障害物にぶつかる事はおろか掠める事すらない。
密林を視界に収めながら、森の端がかなり近くなっているのがわかる。
木漏れ日の光が大きくなっている事から、境界線はすぐそこだった。
森の影が途切れるその最後に、アタシは跳ぶように森から飛び出した。
「っと」
踵を地面に踏みつけて、その場で静止する。
ザッ、と土が蹴り飛ぶ。
目の前が蒼天が広がり、草の海のような平原が僅かに波打っていた。
それを眺めるアタシが立っているのは、ちょうど丘の上だった。
地面が抉れて急斜面になるその手前の方に立つアタシは、目の前を見下す。
それは蛮行だった。
悲鳴を立てるのはやはり人だった。
これまで遭遇する事のなかった人間が、懸念していたイメージが現実となって目の前で繰り広げられていた。
ここには“獣達”という…獰猛を形にした、文字通り『猛獣』とも言える生物が存在している。
その中の一つである“獣”が一頭…いや、一羽が人を襲っていた。
大きな鳥…ワシのような嘴をしたデカい頭部に、ダチョウのような二足歩行の鳥類。
その鳥が襲う人を見て、アタシは眉をピクリと反応した。
「何をやっているんだか…」
それは女性だった。
アタシにとっては全くの赤の他人でもない人が一人…いや、もう一人にも男の子がいた。
見捨てたつもりで置いていったその人らが、再びアタシの目の前でピンチになっている。
その事に妙な巡り合せを感じた。
何やってんだか…。
「手間かけさせるわね…面倒な奇縁だわ」
アタシはジャケットの懐から手を抜く。
「でも…一度出会ったんだもの。 ここは生き辛い世界だけど、それでも死にたくはないわよね」
呆れもそこそこに、アタシはピンチを救うべく行動を開始した。
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