第二十五話
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だから何も言わない。でも事件としては捜査するだろう。二人の死に方が普通じゃないからだ。
「スマン、お前にあたっても仕方ないよな。今日はもう俺は帰るよ……とてもじゃないけど授業なんて受けていられないや」
肩を落として漆多は教室を出て行った。
その寂しそうな後ろ姿にかける言葉が浮かばなかったんだ。
俺の心は罪悪感で満たされていた。不貞を知られたくないために本当のことを語ることができなかった。本当の親友だと思ってくれている奴に対してだ。本当の事を言ってしまったら更に親友を苦しめることになるから……それが理由だ。そしてそのために日向寧々の名誉が傷つけられているということを知っているのに、俺は何も言えないんだ。
命の危機にあった寧々を守れずに死なせてしまい、さらにその死後、彼女の名誉まで傷つけている。本当に最低だ……俺は。ただ、ただ俺は我が身が可愛いだけなんだ。だから何も言えないんだ。何かと屁理屈をこねくり回して自己保身に奔走する糞みたいな男なんだ。
わかっている。それが最低なことを。親友にとるべき態度じゃないことも。わかっているけど何もできないんだ。
してはならないことをしてしまう事と成すべき事をしない事のどちらが罪が重いのか? 何処かで聞いたせりふが俺の頭の中を浸食する。
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