第二十五話
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うしたらいいんだ? 月人、教えてくれよ。何で何で、あいつはあんなところにいたんだ? 何で如月もそこにいたんだ……よぅ? 」
漆多は寧々と如月の関係を疑っているんだ。死んでしまった彼女への切ない思いと、裏切られたような黒い疑惑。その二つの思いの間で苛まれているんだろう。きっと苦しいだろう。
【裏切られたと思っているのか? そうだよ。お前は裏切られている。恋人の日向寧々に。でもそれだけじゃないんだぜ。お前の親友の月人柊にも裏切られているんだよ。日向寧々の逢い引きの相手は如月じゃなく、俺なんだぜ。ウヒャヒャヒャ!!】
どす黒い想いが俺の心で蠢く。……なんだこれは。俺が俺じゃない感情が心の底の底の遙か底にあるような感じ。それを覗いてみようとするが、それは高所恐怖症の人間が高層ビルの屋上から地上を見下ろそうとする感覚に似ている。とてもできやしない。
俺は彼の質問に答えることができなかった。本当の事を俺は知っている。そのことを話せば、漆多の寧々と如月の関係への疑惑は晴れるだろう。でも俺と寧々が一緒にいた事がばれてしまう。……親友への裏切りを俺は告白することができなかったんだ。
本当の事を知ること、それはむしろ漆多に辛い思いをさせるだけだ。知らない方が良いこともあるんだ。
俺と寧々が漆多に隠れて浮気をしていて、その最中に寄生根に乗っ取られた如月が現れた。そして寧々をレイプし殺害した。俺も半殺しにされたけど危機一髪逆に如月を撃退した。こんな事が信じられるというのか。
「月人、お前は寧々と如月が付き合っていたって知っていたのか? 」
動揺を悟られぬよう平静さを保とうとする。
「いや、知らないよ。……っていうか、そんなことってあるわけないだろう? 何かの間違いに違いだ。だってお前と付き合い始めたばっかりじゃないか、日向は」
「当然俺だってウソだと思っている。でも、あいつらが、蛭町君達が言っていた事は本当らしいんだ……。あの廃校舎に二人がいたのは間違いがない。二人が裸で発見されたのも本当だったんだ」
苦しそうに漆多がうめく。彼の言葉に若干の違和感を感じながらも、語られる事実に耳を傾けている。
「でも、二人がそんな仲だったって決まった訳じゃない」
「だったら! だったらなんであんなところに寧々がいたんだよ。なんで裸なんだよ。お前だって知ってるだろ。あの校舎がラブホ代わりに生徒達が使っていたったことくらい。それに立ち入り禁止エリアになってるんだぜ。一体、何の用事があって放課後に行かないといけないんだよ。……それに寧々と如月以外には誰も見つかっていないんだ。だから寧々の相手は如月以外あり得ないんだ」
それ以上は俺は何の反論もできなかった。事実と異なることを知っているのは俺だけなんだから。
警察は被害者のプライバシーに関わること
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