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逆さの砂時計
忘却のレチタティーボ 4
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 こんなの、イヤだ……

「もう少し堕ちても良いですのに」
「え?」

 とすん て、軽い音がした。

 ……あれ?
 さっきまで持ってた剣の切っ先が、私の胸から伸びてる?

 あ、珍しい。
 上司殿が驚く顔、なんて……、見たこと……あった っけ ?

「でも、これはこれで美味ね。楽しみにしていた甲斐がありますわ」
「ステラ……っ!!」

 私の胸から剣が消えた瞬間、二の腕を掴んだメアリ様に引っ立てられて。
 引き離された室長が、伏せる格好で地面に転がった。

 あのー……、メアリ様……?
 今度は、背後から抱きしめて、また、首を咬むつもりなんですか……?
 それより、早く……室長を、助け て……

「ふふ。だぁめ。さようなら、私の可愛いステラ」

 ……です、よね……
 そんな気は、しました……。

 ……ごめんなさい、室長……

 ごめん、ね……スイ……

「やめろ! やめてくれ!!」

 私の耳元で、メアリ様が口を大きく開き。
 這いながら腕を伸ばす室長へ見せつけるように、私の首へ犬歯を立てる。
 その瞬間、二人分の足音がバラバラと聞こえてきた。

 ……誰か、来たのかな……?
 だったら……、お願い……します
 室長を……、助けてください……
 私には、ちょっと……無理そう、なんで……

 ……あ、医療費の請求は、メアリ様宛で、お願いします……
 こんな時なのに……なんかもう、ねむく、って……

 ……つかれ、ちゃった……な……

「頼む! 今もこの世界のどこかに居るなら応えてくれ! あの時の約束を今、ここで果たしてくれ!! ステラを……ステラを助けて!!」

 ……し、つ…………ちょー……

 ……?


「今すぐここへ来てくれ、()()()――ッ!!」



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