第一話 始まりの詩
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タップしてオブジェクト化すると、手に取る。
そして、すぐにアバターが白い光に包まれ、すぐに消えた。
そしてーーーー
「……嘘、だろ」
俺が鏡に写っていた。現実での俺が。
「嘘……」
隣のクレイも、現実のクレイになっている。但し、身長もイジってたらしく、大人サイズだったのが、ロリっぽくなっている。
「……もしかして、キャリブレーション機能を悪用したのか。手の込んだ攻撃しやがる……」
ギリリッと歯を軋ませる。
そして程なく、空中アバターが消えると、中央広場はパニックに陥った。
悲鳴、怒号、絶叫、罵声、懇願。
あらゆる怒り、悲しみが広場に響きわたる。
たった十分其処らでゲームプレイヤーから、囚人に変えられた人間達は周りを巻き込んでいく。
俺は息を吐き、首を振ると、口を開く。
「クレイ、来い」
クレイの手を引き、荒れ狂う人垣を突破して一つの裏路地に入る。
「……クレイ」
まだ震えている少女の名を言うと、続ける。
「頼むから聞いてくれ。俺の名は天城来人……サブゲームマスターだ」
ピクッ、とクレイが動きを止める。
「だからこそ、言わせてもらう。俺と一緒にここを出て、次の村に行こう。あの人の言葉が真実であるならば、この世界で生きるには自分を強化するしかない。MMORPGって言うのは、プレイヤー間でのリソースの奪い合いなんだ。恐らく、同じ事を思う連中にこの街周辺のモンスターは狩り尽くされる。モンスターのリポップを探すより、拠点を移す方が現実的だ。幸い、メインシステムこそ分野では無いが、サブシステム……即ちクエストとかなら俺は分かる。頭に記憶してるからな。だからそこの提案だ」
すると、クレイは言う。
「……死にたくない」
「大丈夫だ」
俺はクレイを抱き締めて言う。
「お前は俺が守る。サブGMの誇りと天城の名に懸けて、必ず現実に返して見せる」
俺は言うと、クレイは頷き、言う。
「約束だからね……?」
「ああ、行こう」
一緒に街を出た俺達は草原を走り、深い森の先にある村へと足を向けた。
それが、長い長い、俺達の冒険の始まりだった。
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