第二百二十話 戸次川の戦いその十二
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「槍も出すのじゃ」
「槍をですな」
「そして」
「そうじゃ」
こう言うのだった。
「それを用意せよ」
「ではその槍で」
「川を渡り終える敵をですか」
「突き落とす」
「そうするのですな」
「叩いてもよい」
上からだ。
「とにかくじゃ」
「はい、ここは」
「槍も使い」
「そのうえで」
「何としても川を渡らせない様にしますか」
「意地でも」
「川を渡られるとな」
それこそ、というのだ。
「もう危うい」
「我等が」
「それだけで」
「だからじゃ、よいな」
義久は大筒の弾が足元で跳ねてもそれを気にせず采配を続けていた、そうして兵達に槍まで持たせてだった。
織田の軍勢を渡らせまいとした、しかし。
謙信も信玄もだ、その槍隊を見ても言った。
「怯むことはありません!」
「槍を恐れる必要はない!」
自ら先頭に立っての言葉だった。
「このままです!」
「先に進めばよい!」
こう言う、そしてその言葉を受けてだった。
上杉の軍勢からは柿崎が、武田の軍勢からは山縣が出て来た。二人はそれぞれの主君に対して言った。
「ではここは」
「それがしが」
「一番槍をですか」
「為してみせるか」
「はい、どうかその名誉をです」
「お与え下さい」
それぞれ謙信と信玄に言うのだった。
「是非共」
「お願い出来ます」
「よくぞ言いました」
「その言葉待っておったぞ」
二人はそれぞれだ、確かな笑みで自分達の家臣に答えた。
「では是非です」
「ここは手柄を立ててみよ」
「はい、それでは」
「ここは」
二人は主達の言葉に明るい笑顔になって頷いてだ、そのうえでだった。
一気に前に出た、確かに目の前には島津の兵達が槍を構えている。だがその彼等の上に。
馬を跳ばしてだ、そこからだった。
彼等の中に着地した、そこからそれぞれの槍を振るい縦横に暴れる。ここで謙信も信玄も家臣達に言った。
「あのままにしてはなりません!」
「源四郎に続くのじゃ!」
「さあ、二番槍です!」
「その手柄を立てよ!」
「では次は!」
「拙者が!」
上杉からは村上義清が、武田からは馬場が出た。そしてだった。
二人も馬を跳ばし敵陣の中に飛び込んだ。そして彼等も暴れ。
縦横に暴れ狂いだ、中から見出し。
それを見てだ、謙信と信玄は全軍に命じた。
「今です!」
「皆の者続け!」
「全軍川を渡るのです!」
「そして敵を蹴散らすのじゃ!」
二人も自ら馬を跳ばし刀を手に島津の橙の軍勢の中に飛び込んだ。そこに黒と赤の軍勢が一気に続いた。
そのうえで川沿いに布陣していた島津の軍勢と戦う、さしもの島津の強者達もこの二人の采配には怯んだ。
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