第二百二十話 戸次川の戦いその十一
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「さもなければじゃ」
「今度は我等の持ち場ですか」
「攻められる」
「だから我等はですか」
「このまま我等の持ち場を」
「うむ、守るのじゃ」
こう言うのだった。
「よいな」
「では兄上」
「是非共」
歳久と家久は長兄を見送り自分達の持ち場所に戻った。そうしてだった。
歳久は自ら軍勢を率いて砲撃が集中的に行われている武田と上杉の軍勢が向かっている場所に来た。そして自ら弾が跳ね飛ぶ中に入ってだった。
采配を振るってだ、周りの兵達に命じた。
「恐れるな、川を渡る兵達を攻めよ」
「武田と上杉の軍勢に」
「このまま」
「鉄砲を撃つのじゃ」
そしてというのだ。
「弓矢も放て、よいな」
「しかし殿」
「殿がここにおられては」
周りの兵達がその義久に言った。
「あまりにもです」
「危険です」
「大筒の弾が傍まで来ております」
「これではです」
「よい」
案ずるなとだ、義久は恐れを見せずに返した。
「わしは死なぬ」
「ですか」
「大筒の攻めでは」
「この程度で死んでは九州を手に入れることなぞじゃ」
とてもというのだ。
「だからですか」
「殿もですか」
「下がられず」
「ここにおられますか」
「そうじゃ、わしも守る」
自らというのだ。
「御主達と共にな」
「では我等が」
「我等が殿をお守りします」
「例え大筒の弾が来ても」
「武田、上杉の大軍が来ても」
「それでも」
「そうじゃ、守る」
是非にとだ、こう言ってだった。
島津の兵達は喜久を守りつつ彼を守って一人として逃げなかった。そして自分達に迫る武田、上杉の軍勢にだ。
鉄砲や弓矢で攻めていた、だが。
謙信は自ら先頭に立ちだ、己が率いる兵達に言った。
「怯んではなりません」
「はい、このままですね」
「川を渡り」
「そのうえで」
「そうです、そこからです」
まさにというのだ、そしてだった。
鉄砲も弓矢も恐れず先に進んだ、それは信玄もだった。
どれだけ鉄砲の弾や矢が来てもだ、彼も恐れず己の兵達に告げていた。
「よいな」
「はい、我等がですな」
「先に川を渡り」
「手柄を立てるのじゃ」
こう言うのだった、両者はそれぞれ競って先に進んでいた。それを見てだった。
義久はその目を強くさせてだ、再び周りの兵達に言った。
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