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戦国異伝
第二百二十話 戸次川の戦いその十
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「大筒を見ても動じておりませぬ」
「微動だにしておらぬとは」
「では幾ら撃っても」
「これは退きませぬな」
「ですな、間違いなく」
「しかしです」
 それでもとも言った蒲生だった。
「必ず陣は崩れます」
「砲によって」
「そこをです」
「渡りますか」
「信忠様のお言葉に従い」 
 こう話してだ、島津の動きも見た。そして。 
 その中でだ、遂にだった。
 大筒の砲撃がはじまった。砲の一つ一つが凄まじい音を立ててだ。 
 対岸にいる島津の軍勢を撃った、砲弾は川を越えて島津の陣地に飛び込んでだ。地も跳ねつつ島津の兵達を倒していた。
 砲弾は義久の傍にも来て兵達を吹き飛ばす、だが。
 義久は全く動じずにだ、こう言った。
「動くでない」
「はい」
「承知しています」
「そしてじゃ」
 旗本達にも言うのだった。
「川を守るのじゃ」
「敵を渡らせない」
「絶対にですな」
「その通りじゃ、何としてもな」
 こう告げて持ち場を守らせていた、例えどれだけ砲撃を受けようとも。
 しかし織田軍の大筒の数は多くその砲撃も止まらない、しかも。
 信忠は一点に砲撃を集中させた、それと共にだった。
「よいか、敵の陣に穴を開けてじゃ」
「その穴にですな」
「川を渡った軍勢を入れ」
「そしてそのうえで」
「攻めるのですな」
「そうじゃ、その最初に渡るのはな」
 それはというと。
「信玄、謙信じゃ」
「我等にですか」
「この度も先陣の名誉を与えて下さいますか」
「そうじゃ」
 その通りだとだ、信忠は信玄と謙信にも答えた。
「御主達が大筒で穴を開けた場所に川を渡って入りじゃ」
「そしてですな」
「そのうえで」
「その場所を確保するのじゃ」
「そこから二陣、三陣と送り込み」
「戦に勝ちますな」
「そういうことじゃ」
 これが信忠の考えだった、こう言ってだった。
 大筒を使う兵達にだ、こうも命じた。
「川を渡る軍勢を助けよ」
「その前と周りの敵軍にですな」
「砲撃を集めますか」
「そうせよ」
 自ら采配を振るって命じた、そして実際にだった。
 信玄と謙信がそれぞれの軍勢を率いて川を渡りだした、砲撃はその両者の前に集中した。そしてそれで島津の軍勢に穴を開けていっていた。
 その様子を見てだ、歳久と家久が義久に言った。
「兄上、敵が川を渡りだしています」
「あれは武田と上杉の軍勢です」
「織田家でも一二を争う強者達です」
「あの者達に渡られますと」
「わかっておる」 
 歳久は弟達の言葉に険しい顔で答えた。
「わしが行く」
「そしてですか」
「武田と上杉を防がれますか」
「ここは」
「そうする」
 まさにというのだ。
「軍勢を率いてな」
「では我等も」
「お供しま
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