第二百二十話 戸次川の戦いその七
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「そのままです」
「肥後を下りか」
「島原等は国人達に任せています」
「左様か、やはり徳川殿もな」
家康、彼もというのだ。
「わかっておられるわ」
「我等のことを」
「実に、ですな」
「うむ、龍造寺の様にはいかぬ」
龍造寺隆信、彼のことだ。かつて島津が破った。
「あの時はな」
「はい、大軍に驕る龍造寺を誘い出し」
「それから仕掛けらましたが」
「徳川殿は既にわかっておられますな」
「我等の戦の仕方がな」
義久は弟達に話した。
「実にな、だからな」
「それがわかっていて」
「それで、ですな」
「沖田にも向かわれず」
「ただひたすら、ですな」
「肥後から攻め入るつもりですな」
「そうじゃ、ならばこちらは守る」
肥後の方はというのだ。
「一万でな」
「その一万で凌ぎ」
「そして我等四万で」
「織田の主力を防ぎますか」
「そうする、勝てぬが」
義久はそれは無理だと確信していた、織田の大軍そして信長と彼の下にいる将帥達に勝つことはというのだ。
「必死に戦いな」
「引き分けますな」
「何としても」
「それでいくぞ、では戸次川じゃ」
そこに兵をさらに向かわせるのだった。
その中でだ、遂にだ。
信忠は先陣を戸次川に入れた。その報を聞き周りの諸将に言った。
「まずは守りな」
「先陣は、ですな」
「迂闊に動かず」
「島津を侮ってはならぬ」
例え兵が少なくともというのだ。
「だからじゃ」
「では先陣に守らせ」
「そして我等本陣が来てから」
「そのうえで」
「戦となりますか」
「そうじゃ、それでじゃが」
ここでだ、信忠は滝川に顔を向けて彼に告げた。
「甲賀者達を使いじゃ」
「はい、そしてですな」
「戦の場を隅から隅まで見るのじゃ」
戸次川とその周りのというのだ。
「島津は伏兵をよく使う」
「それで勝ってきていますな」
「耳川でも沖田畷でもな」
この二つの島津を雄飛させた戦でもだ、実際に彼等は伏兵を使って勝っている。だから信忠も言うのだ。
「そうしておるからな」
「だからこそですな」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「伏兵を探し出すのじゃ」
「おるのかおらぬのか」
「おればその場所もな。それに」
さらにだった、信忠は言った。
「もう一つある」
「はい、退いてもですな」
「迂闊に追うな、その伏兵のことと同じじゃが」
「島津得意の釣り野伏せにはかからぬ」
「その為じゃ、ここは慎重に進むとしよう」
こう言ってだ、信長は迂闊に兵を進めさせなかった。そのうえで戸次川においても先陣にまずは本陣到着まで待たせた。
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