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逆さの砂時計
忘却のレチタティーボ 3
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て」
「いいえ。お元気なら良かったですわ。こちらこそ突然押しかけてしまってごめんなさい。あ、そうそう。ステラさんにお渡ししたい物がありますの。少しだけお邪魔してもよろしいかしら?」

 え。
 今から家の中に入れろ、ってこと?

 どうしよう。
 一応新築だけど、相手は貴族のお嬢様なんだよねえ。
 立場ある貴族のお嬢様を、庶民の家なんかに上げて良いものなんか?
 でも、心配して家まで来てくれた人を追い返すのも、なんか失礼だよね。
 うぅーむ……仕方ない、か。

「どうぞ。狭い上に、散らかってますけど」

 片開きの扉を全開にして招き入れると、メアリ様はにっこりと目を細め、屋内へ三歩くらい足を進めた後、扉を閉めた私に振り返った。
 へ? と思った瞬間に私の視界を埋め尽くす、美女の妖艶な微笑。

 ち、近い!
 綺麗な顔が近い!

「本当に可愛い方ね、ステラさん」
「へ? か、わわわぁあっ!?」

 ま、待って!?
 何故に顔を寄せてくるんですか、メアリ様!?
 そこ、首! 首ですってば!
 耳の下辺りに息が掛かって、

「痛っ!?」

 なっ、なんっ……か、咬まれてる!?

 嘘!?
 なんで、どうして、メアリ様に首を咬まれてるの、私!?
 目の前がくらくらしてきたし、なに!?
 どういう状況なの、これえ!?

「……ねえ、ステラさん。一緒に来てくださらない? 私、貴女と行きたい場所があるんですの」
「っっ!」

 それはダメ!
 絶対にダメです!
 室長に氷漬けにされてしまいます!
 一週間後にしてください!!

 って、言いたいし、思ってるのに。

 どうして?
 私の手が、勝手に玄関扉を開いてる。
 足元がふわふわして、ふらふらと家の外に出ちゃう。
 扉を開けたまま、メアリ様に手を引かれて、離れていく。

 ちょっと待って!
 せめて、戸締りだけはさせて!
 盗人が入ったらイヤとか、外気で食料が傷みやすくなるとか。
 室長に知られたら冗談抜きで殺されちゃうんですけど私ーっ! とか。
 頭の中だけで、絶賛ぐるんぐるんしてます!

 そんな、楽しそうにくすくす笑われてますけどね、メアリ様?
 被害は全部、こっちに回ってくるんですってば!
 帰して!
 今すぐ家に帰してぇーッ!

 ……って、あれ? この道は……。

「ふふ。ね、ステラさん。貴女は毎日、ここに来ているのでしょう?」

 来てます、ね。ええ。
 小さい頃から毎日欠かさず、白百合を置いてってますよ?
 今日も、午前中に来てましたし。

 メアリ様に肩を抱かれつつ見つめる、旧教会の正面扉の前には。
 私が毎日捧げ続けた白百合が積み重なってる。

「それで
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