忘却のレチタティーボ 3
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た室長の手に奪い取られた。
「え……いえ、あの。この程度なら、自分で持ちますよ?」
三袋も四袋もあったらお願いしたけど、一袋で収まっちゃったし。
「荷物持ちとして来たんだ。俺が持つ」
むむー……それはなんか、申し訳ない気がするぞ?
でも、せっかく持ってくれるって言ってるんだし。
ここは、上司殿の顔を立てる意味も込めて、ご厚意に甘えるべきなのか?
でもあれ、全部私のだしなあ……むーんんー……。
いいや。
投げた。
「ありがとうございます」
お礼だけは言って、上司殿の隣をてくてく歩く。
青空の下を誰かと一緒に歩くなんて、どれくらいぶりだろ。
友達と買い物した記憶は無いし、上司殿とも夕暮れ時しか出歩かないし、昼休み明けの連行は数に含めません。
一人暮らしの準備期間中、荷物運びを手伝ってくれたお兄ちゃんと一緒に商店街で外食した時以来かな?
日中、職場以外で隣に誰かが居るって、変な感じー。
人通りが増えてきた頃、旧教会に白百合を捧げ、人波に逆らい無事帰宅。
「ありがとうございました。お手数をかけてしまって、すみません」
「いや。一週間、何があっても、外には絶対出るなよ。いいな?」
「承知してます」
その為に、大量の食材を買い込んできたんだから。
片付けるのが地味に大変だ。
家の前で職場へと引き返す上司殿を見送って、荷物を運び入れる。
まずは昼食の仕度から始めますかねー!
何事もなく、だらだらと自堕落に過ごして、あっという間に夕飯時。
窓から見た空は、東が暗い青で、西が明るいオレンジ色。
よくよく目を凝らすと、真ん中辺りで一番星が光ってる。
休みってさ、前もって予定を組んでおけば有意義に楽しめるもんだけど、突然ドワーッと押し付けられても結構困るよね。
逆に疲れるっていうか。
休みなのに疲れるとは、なんちゅー贅沢な。
「こんばんは」
「? はーい?」
突然、玄関扉をコンコンと叩かれた。
来客?
小走りでお出迎えに行くと、……んん〜?
なにゆえメアリ様が、我が家なんぞへおいでになられたのか?
仕事上がりらしい私服姿のメアリ様は、目映い金色の巻き毛を揺らして、にっこりと微笑んだ。
「今朝、出勤してすぐお戻りになったご様子でしたので。体調が優れないのかと、心配になってお伺いさせていただきましたの。大丈夫かしら?」
ありゃ。
ひょっとして、お客様や上司殿とのやり取りも見られてたのかな?
それは社会人として恥ずかしい上に、一週間後の女性陣の反応が怖い!
「えっと、はい。体のほうは全然なんともないです。すみません、わざわざおいでいただいてしまっ
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