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逆さの砂時計
忘却のレチタティーボ 3
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ら邪魔と! 率直に言ってくれたほうがまだマシなんですよ! 室長のバカ!!」

 あーったまキたーっ!!
 休みをくれるってんなら休んでやろうじゃないか!
 今日から一週間と一日、お望み通り目の前から消えてやるわよ!!

「ステラ!」
「現時点からお休みを頂きます。給料は無くて結構! 心配されなくても、ちゃんと自宅で大人しくしてますから、どうぞその間は、私の存在なんか、きれいさっぱりスッキリすぱーんと忘れていてください!」
「待て、家まで」
「送らなくて良いです! 室長は二人分のお仕事、頑張ってくださいね!」

 荷物を持って、管理室を出る。

 あーっ! いっそ辞職すれば良かった!
 こんなふうに厄介者扱いされるくらいなら、家を売って、実家に帰って、お父さんとお母さんにバカにされたほうがよっぽど良いわよ!
 それはそれで、絶望的な気分に陥りそうだけど!

「んひゃ!?」
「っと?」

 ああ、しまった。
 うつむいて歩いてたせいで、開館したばかりの総合入り口でまたお客様と激突してしまった。

 いかんいかん。
 ちょいと冷静になれ、私。
 ひっひっふーだ、ひっひっふー……良し。

「すみません、お客様。お怪我などはございませんか?」

 肩がぶつかった程度で怪我をする人間が居るとは思えないけど、一応ね。

「あー。全然?」

 おお……。今度は全身真っ黒な人だ。目だけは赤い。
 ううん。『赤』っていうよりは、『紅』かな?

 って、ここ、結構北寄りの地域なんだけど。
 コートを羽織ってるとはいえ、上半身裸で寒くないのか。


「離れろ、ステラ!」


 へ?

「室長 っ?」

 お、追いかけてきてたんですかーって……
 …………なして、私を背中に庇われてるんですかね?
 何事?

「お前……ルグレット?」

 黒い人が、ちょっと驚いた目で室長を見てる。
 あれ、知り合い?

「…………ベゼドラか」

 知り合いなのね。
 え、じゃあ、なんでそんなに怖い顔で睨んでるの?

「ふぅん? 実体持ちは初めてだな。どうやって解いた?」
「話すことなど何も無い。何の為に来たのかは知らないが、用事が済んだらとっとと街から出て行け!」
「言われるまでもないが、こっちにはこっちの事情があってな。この際だ。後でちょっと来い。その人間……」
「っ! 分かった、後で行く。彼女には手を出すな!」

 後ろ手に引き寄せられて、身動きがとれません。
 逃げるなって意味ですか?
 もう本当、何がどうなってるの?

「来い、ステラ」
「! だから、室長は仕事」
「来るんだ!」

 痛い!
 腕、痛いってば!
 引っ張らなくたって行きますよ!
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