12部分:第十二章
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第十二章
その影もまたそれで消えた。後にはその年齢に相応しい無邪気な女の子がいるだけだった。女の子は我に返るとこう言うのだった。
「この電車で良かったわよね」
「貴女は。そうね」
女の子には見えないのがわかったうえでの今の沙耶香の言葉だった。
「背中のランドセルが取れてからね」
こう言って姿を消したのだった。忍はここでも何もなかったように電車に乗るのだった。
三日目は体育の授業をしていた。バレーボールの時間である。
女の子達は上は白の体操服で下は赤の半ズボンである。その姿は如何にも今の体育の女の子の服装だった。沙耶香は体育館で元気よく動き回る彼女達を忍の後ろから見て言うのだった。
「こうした服もいいわね」
その健康的な姿を見ての言葉である。
「実にね」
「来たわよ!」
「ええ!」
彼女は一人呟いている間にだ。同じ姿の忍のところにボールが来たのだった。
その彼女のところにだった。横にいるクラスメイトの一人の目が急に変わった。
そうしてだった。彼女に向かおうとする。だがここでまた沙耶香が出て来たのであった。
「体育の時間に来るとはね」
「何っ!?」
「考えたわね」
こうその女の子に対して告げたのだった。また忍の身体から出ながらだ。
「しかもボールが来てそちらに注意がいっている時にね」
「人は急所を打てばそれで死ぬ」
明らかに人ではないものの言葉だった。今のクラスメイトの言葉は。
「だからこそだ」
「説明有り難う。ただ」
「ただ。何だ?」
「私がいるのは知らなかったのね」
こうそのクラスメイトの中にいる何かに告げたのだった。
「どうやらね」
「貴様、一体何者だ」
「貴方を倒す者よ」
今度告げた言葉はこれであった。
「それよ」
「倒すというのか、我を」
「そうよ。この娘はやらせないわ」
「愚かなことを言う」
「愚かなことではないわ。それに」
「何だ?」
ここで話が変わったのであった。
「気になることがあるわね」
「気になることだというのか」
「この娘は只の女の子よ」
今彼女が守護しているその忍の話からはじめるのだった。当然彼女は今行われようとしていることにも会話にも全く気付いていない。
「只のね」
「その通りだ」
「その娘に随分と来るわね」
このことをその異形の者に対して問うのであった。
「それも執拗に」
「それは素材がいいからだ」
「素材ね」
「確かにその娘は普通の娘だ」
それは異形の者も認めるところであった。
「それはな」
「ではどうしてかしら」
「魂がいいのだ」
ここでこれが話に出て来た。
「魂がだ」
「魂というのね」
「その娘は前世で素晴らしい行いをしてきた」
「それで魂が澄んでいるというのね」
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