マブラヴ
1060話
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飛べる筈だが、それを使えば逃げられたような気がしないでもない。
ただ、鬼としての本能か逃げるよりも俺に対して乾坤一擲の魔眼を使う事を選んだのだろう。
「……お前が本物の酒呑童子かどうかっていうのは、正直俺にとってはどうでもいい。ただ、その力が魅力的である以上は大人しく俺に食い尽くされてくれ」
「はぁ、はぁ、はぁ……食われるだぁ? はっ、お前のような化け物に食われるんなら、ぞれもいいがも、な。げふっ」
最後まで喋りきった瞬間、酒呑童子の口からは血が吐き出される。
もう既に動ける状態ではなく、死からは逃れられないというのは自分自身で理解しているのだろう。
確かにこいつは酒呑童子として他の鬼を引き連れてこの関西呪術協会に攻め寄せてきた。
何を目的として攻め寄せてきたのかは分からないし、それを理解するつもりもない。
ただ……それでも、俺が混沌精霊としての姿を現した時に存在の格の差というものを理解しただろうにも関わらず、逃げ出さずに正面から向かってきたその精神は潔いと言ってもいい。
更には、俺の展開した魔法障壁を破り、一瞬ではあっても俺に危険だという直感を抱かせる程の攻撃を掛けてきた。
それだけで、俺の目の前で倒れている鬼は尊敬にすら値する。
「お前の力は、永遠に俺と共にある。それだけは約束しよう、生粋の鬼よ」
「はっ、ははっ」
既に言葉を発する事も出来ないのだろう。だが、その口元に浮かんでいるのは間違いなく笑み。
牙を剥き出しにした鬼らしい笑みは、相手を恨むでもなく、妬むでもない。
自分よりも強敵を相手にして負けたのであればしょうがない。そんな風に取れる笑み。
「じゃあ、またな。……スライムッ!」
これ以上長く話していても、それはただの時間の無駄だ。
いや、それどころか目の前にいる酒呑童子を侮辱することにすらなりかねない。
今俺が出来るのは、ただ大人しくこの鬼の命を絶ち、その力を己がものとする事。
それ故に、俺の言葉に従って空間倉庫から出てきた銀色のスライムはその触手を伸ばして酒呑童子を包み込む。
水銀の如きスライムに包み込まれた酒呑童子を眺め、この状態で相手をいたぶる趣味もないので、炎獣を30匹程周囲に展開した後ですぐに次の段階へと……酒呑童子を吸収する為に口を開く。
「SPブースト!」
その言葉と共に、俺のSPが大量に消費されていくのを感じる。
これで、もし何もスキルを習得出来なかったら色々と笑い話にしかならないな。
そんな風に思いながらも、視線の先に存在するスライムが徐々に小さくなっていく……つまり酒呑童子の肉体が消え去っていくのを感じる。
だが、今までスキルを習得した時に感じた衝撃が来ることはない。
10秒、15秒、20秒、25秒、
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