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第一章
黒魔術師松本沙耶香 天使篇
「貴女の娘は十五までです」
時任亜由美はこう告げられたのだった。
「十五までしか生きられません」
ある高名な占い師がであった。彼女に告げたのである。
「残念ですが」
「それは病によってですか!?」
亜由美はすぐに彼女に問うた。問わずにはいられなかった。
「そのせいで」
「いえ、違います」
しかしだった。占い師はそうではないというのだ。そしてこうも告げてきたのだった。暗く二人の周りにも暗闇しかない部屋の中で水晶の輝きだけが見える。亜由美と占い師はその水晶を囲んで向かい合って座っているのだった。そのうえで今娘の話をしているのだった。
「それはです」
「では何によって娘は」
十五まで生きられないのか、それを問うたのであった。
「それは一体」
「魔です」
それだという占い師だった。
「魔によってです」
「魔!?」
「そう、魔です」
また言う占い師だった。そのフードの奥で話すのだった。
「それによって命を奪われてしまうのです」
「魔によってですか」
「そうです。しかしです」
占い師の言葉はここで変わってきたのだった。
「その魔を退くことができれば」
「どうなるのですか!?」
「娘さんの命は延びます」
そうなるというのであった。水晶を見ながらの言葉だった。亜由美の目にはその中に映っているものは見えはしない。しかし占い師はそれを見続けながら述べていくのであった。
「十五よりも」
「そうなのですか」
「天命を全うできます」
こうまで言ってきたのだった。言うまでもなくそれは十五では済まないだけの長さであった。
「その魔を退くことができれば」
「それではですけれど」
さらに問わずにはいられなかった。娘の母として。思わず身を乗り出してそのうえで占い師に対して問うたのだった。真摯そのものの声で。
「それはどの様にして」
「退けられるかですね」
「はい、どうすれば」
できるかと。そこをさらに問うのであった。
「できるでしょうか」
「天使が見えます」
占い師はやはり水晶玉を見ながら述べたのだった。
「天使がです」
「天使が」
「そうです。それが見えます」
また言うのであった。
「それが見えます」
「天使といいますと」
「黒い天使です」
言葉が加えられた。黒という天使にはいささか不釣合いな色であった。今度はそれが言葉として亜由美に対して出されたのであった。
「それが今」
「黒い天使ですか」
「堕天使とも言うべきでしょうか」
言葉がまたしても出された。
「それが見えます」
「黒い堕天使ですか」
「決して悪魔ではなく。堕天使です」
そうした意味であくまで天使だとい
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