第十二話 大人or子ども
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》にて、通常の社会より遥かに「甘い話には裏がある」という言葉の信ぴょう性が高い。
だが、目の前にいる彼はそういう輩ではないと、どこか直感めいた何かがあった。
そして彼は、操作する手を止め、口を開いた。
「え?……いや、目の前で困ってる美少女がいたら手を差し伸べるのが普通でしょ。紳士として」
さも当然のように言い切る。
シリカはポカンと口を開けた。
その様子に、男は焦ったようにまくし立て始める。
「あ、あくまで紳士としてだよ?カワイイは正義という常識にして不変の定義を前提とした人助けだよ!?そこに美少女との伝手ができるぜやっほ〜いとか邪な感情は一切ないからね!?」
「………ふふ、あははっ!」
身振り手振りも合わせて舌を回す男に、シリカはたまらず吹き出してしまう。
以前、シリカはプロポーズを受けたことがあった。未だ十三歳の身で、現実では告白すらされたことのない少女が、大の大人にそんなことをされれば恐怖しか感じない。
その人以外にも、下心を抱えてシリカに近づいてくる男は幾人もいた。シリカはそれらを全て恐れて避けていた。
けれど、目の前で慌てふためいている彼に、その恐れなんてなにも感じない。むしろ愉快と感じれる。
それに、
「そうそう。女は笑顔が一番だ」
つい数瞬前まで慌てていたのが一転、滲み出る優しさが見える表情。
ポン、とシリカの頭に手を置いて、彼は言う。
こんな彼を、それこそ下卑た男たちと同類のように扱うには、シリカの心は大人びていなかった。
「えっと、これだけじゃ足りないと思うんですけど……」
冷たい死線に触れた直後の、身にしみる暖かい優しさにそのまま流れていきそうな感覚を引き戻し、シリカはトレード欄に自分の全財産を振り込もうとした。
けれど、男はその前にウインドウを閉じる。
「要らねえって。どうせ売る予定だったしな」
「でも……」
「男には、カッコつけたい場面があるんだよ」
分かるか?と視線で訴える表情を見るに、これ以上食い下がったら逆に失礼だと納得し、シリカは男の善意を受け止めた。
それはそれとして、とシリカは手を差し出した。
「あたし、シリカって言います」
「ん、俺はリュウヤだ。少しの間だがよろしくな、シリカ」
リュウヤと名乗ったパーカー姿の男は快活な笑みを見せながら、シリカの手を握った。
「ほんじゃ、ま、とりあえずこの森抜けますか」
「あ、はい!」
リュウヤの後ろを歩きながらふと、シリカは一つの疑問を浮かばせた。
この人、なんでここにいるんだろう……?
地図を片手にしばし歩くこと数分、早々と森を抜けたシリカとリュウヤは三十五層主街区《ミ
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