第十二話 大人or子ども
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ほう……?美味いもんに宿付きたぁ、好条件だな」
「あっ、リュウヤさん、ホームはどこですか?」
「ああ、気にしなくていい。どうせこの層で泊まるとこ探してたんだ」
「じゃあ一石二鳥、ですね」
「その通りだな」
ははっと笑うリュウヤにつられてシリカも笑みを浮かべる。
この人といるとなぜか心が落ち着く。まるで優しく照らしてくれる太陽のような存在感だ。
だから暗くなる思考がいい意味で強制的に明るくなっていくから、傷心中のシリカにとってとても居心地が良い。
だが、そんな彼女の目の端に、見覚えがあるプレイヤーが映った。
つい先ほどに、ケンカ別れしたパーティーの一団だ。その中には当然、ケンカの原因になった女がいる。
会いたくないし、話したくもないシリカはさっさと宿である《風見鶏亭》に入ろうとするが、女の声がシリカを捉える。
「あれ、シリカじゃない」
向こうから声をかけられては無視するわけには行かず、シリカは槍使い、名をロザリアといった女を直視せずに立ち止まる。
「へぇ〜え、あの森脱出できたんだ」
それだけを言うなら帰ってくれと祈るが、相手はシリカを離すつもりはないらしい。そして目ざとくシリカの方が空いているのに気づき、嫌な笑みを見せた。
「あらぁ……?あのトカゲ、もしかしてぇ……」
「死にました。でもーーー!」
最後まで言わせるのが嫌で自分から事実を告げる。そして言い返すつもりで宣言した。
「絶対に生き返らせて見せます!」
その言葉に槍使いの女は眉をピクリと震わせる。
「へぇ、てことは《思い出の丘》に行く気なんだ。でもあんたに攻略できるかしら」
「できるに決まってんだろ」
無謀な挑戦だとあざ笑う槍使いに、リュウヤがいきなり割り込んできた。それも強い口調で。
その彼の表情はさっきとなんら変わらないのだが、どこかが決定的に違う。
そんなシリカの思考をよそに話は進む。
「難易度が高いわけじゃねえしな。中層ゾーンのプレイヤーでもパーティー組みゃなんとかなる」
シリカは行ったことがないからなんとも言えないが、彼が言うならそうなのだろう。シリカとは比べ物にならない強さを見せた彼の判断は、シリカの希望をより明るくする。
そして槍使いに言い返す様はそれだけでシリカは救われた気分になった。
だが、そこで話を終えれば良いものの、リュウヤは付け足すように言い始めた。
「あ、でも〜、あんたにゃいくら護衛つけても無理かな〜」
「な、なんですって……?」
「いや、未成年の少女いたぶって悦に浸ってる底意地の悪さとかがシステムに反映しちゃってぜってぇ全滅すっからさ。アッハッハ」
「り、リュウヤさん……?」
笑ってる。笑ってるの
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