第十二話 大人or子ども
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「そんな顔すんな嬢ちゃん。かわいい顔が台無しだぜ?」
突然現れ、シリカを助けた青年が初めて放った言葉がそれだった。
シリカは《ビーストテイマー》という、かなり珍しいプレイヤーだ。
詳細は省くが、稀に出現する、プレイヤーに害意を持たないモンスターをテイミングしそれが成功するとそのモンスターを《使い魔》にでき、晴れて《ビーストテイマー》となる。
珍しいとはいえ《ビーストテイマー》は少なからず存在する。
しかしシリカはそれに輪をかけて珍しいプレイヤーだった。
彼女がテイムしたモンスター《フェザーリドラ》は彼女以外、誰もテイムに成功したことがないのだ。
その珍しさと、彼女自身の年齢や容姿から《竜使いのシリカ》と呼ばれ、周囲からアイドル扱いされていた。
彼女は未だ中学生くらいの年齢だ。つまり精神的にもまだ幼く、チヤホヤされ続ければつけあがり、自惚れる。
それは致し方ないことかもしれない。
いきなり戦闘の世界に放り出されたしまった無力な少女が、周囲の自分に対する態度で、自分は本当は特別な存在だったのだと慢心するのは、不思議ではない。むしろ当然と言えよう。
だが結局はその慢心が、言葉通り彼女の、いや彼女の相棒の身を滅ぼすことになる。
初めは些細な口論から始まった。
少し前から参加していたパーティーで、ダンジョンを冒険していた時だ。
そこは三十五層の北部に広がる《迷いの森》と呼ばれるダンジョン。
いくつも存在する、フロアボスを屠ることに焦点を置いている攻略組が手を出していない場所であり、中層ゾーンのプレイヤーたちが冒険する場所の一つでもある。
そこで朝から一日中、彼らは存分に冒険に専念していた。
シリカが参加した六人のパーティーは手練が多く、トレジャーボックスをいくつも発見し、モンスターも不安なく狩っていると、いつのまにか多くのアイテムと金額を手に入れていた。
そして日が暮れはじめ、そろそろ引き返そうとした時、もう一人の女性プレイヤーが言った。
ーーー帰還後のアイテム分配なんだけど。アンタはそのトカゲが回復してくれるんだから、ヒール結晶は要らないわよね。
牽制のつもりか、自分の紅い髪をくるくるといじりながら言う長槍を持つ彼女に、シリカはカチンときて反撃する。
ーーーあなたこそ、後衛でチョロチョロ動いてるだけでろくに前に出てこないんだから、クリスタルなんて使わないんじゃないですか。
そこからはもう売り言葉に買い言葉。パーティーリーダーである盾剣士の仲裁も焼け石に水。
ラチがあかないと怒りで沸騰する頭がシリカの口を動かした。
ーーーもう結構です。あなたとは二度と組みません。クリスタルも要らないです。あたし
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