第十二話 大人or子ども
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朝目覚めると、隣には可愛らしい妹の寝顔。
昼出かければ、隣には無邪気な妹の笑顔。
夜寝ようとすれば、隣には涙を溜める妹の素顔。
一日中、片時も離れたくないと言わんばかりに隣にいつづける彼女に、兄は苦笑する。
妹の願いに、ではなく。
こんな幸せが、“家族”といられる幸せが、自分に降り注いでいる時間に、苦笑すーーーーーーーーー
ーーーーーーピシッ……!
大量のしかばねの塔を築く。
一人、また一人と数を増やし続け、塔には血をつけ、身体に傷を刻み込む。
手は血で汚れ、目は淀み、なにも見通すことなど出来ない。
その目が捉えるのは、塔の天辺に飾られた屍体。
最も近く、最も遠い“ソレ”は、手を伸ばす。
「ーーーーーー」
何かをしゃべっているようだ。
……なにも聞こえない。
口を動かしているが、わずかな動きしかできず、読み取ることすら不可。
だからーーー“ソレ”を斬って捨てた。文字通りに。
そして塔の頂上にたたずむ《鬼》は、嗤った。
なおも口を動かそうとする屍体の遺言をリピートし、哀しく嗤った。
■いす■■っ■■、■■■ぃーーーーーー
ーーーーーービシィッッッ!!
「くあぁ〜……よく寝た」
リュウヤは目を覚ますと、ググッと伸びをしながらあくびをもらす。
涙の溜まった目尻を拭いながら、先ほどまで見ていた夢を思い出し、ため息をついた。
「懐かしいな……」
特に感慨もなく、ただテンプレのようにつぶやく。
もう半年以上も前の話だというのに、未練がましく夢を見るあたり、人間ってすげえとか適当な感想を無理やり自分に押し付けて窓から空を見やった。
時刻はまだ日が登っていない早朝。夜型人間でもない限り誰もが眠りについている時間帯だ。
それはリュウヤの泊まるこの部屋でベッドを占領している少女も例外ではなく、すーすーと可愛らしい寝息を立てながら寝ている。
昨日の晩に会ったばかりの幼い少女を自分の部屋に泊めさせ、ベッドで寝かせていると誰かに聞かれたら社会的に死ぬと頭の片隅で恐怖を覚えつつ、つい出てきた言葉は、
「少しは、吹っ切れたみたいだな……」
昨日、相棒を失った悲しみで泣き崩れ精神が安定していなかった彼女は、しかし今はどこか穏やかそうに眠っている。
その彼女の寝顔にリュウヤは笑みをこぼし、除けられた布団をしっかりとかけてあげると静かに部屋から出て行く。
冬の朝日の見えない薄暗闇が空を覆うこの時間は、少々どころではなく寒い。
寒いなぁ、と独りつぶやく彼の言葉は、彼と一緒に闇へと消えていった。
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