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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
29.ジャイアント・キル
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「それに?」

「仮に教えた所で、恐らくイデアは自分の行動を曲げたりせんさ。何せ、この私の娘だからな」

「やれやれ……まったくお前達親子ときたら。少しは心配するヲカエの身にもなってみたらどうだ?」



 = =



 エタルニア公国司令部に存在する私室。
 無骨な要塞の中でひときわ異彩を放つ煌びやかなその部屋の天蓋付きベッドの上で、一人のお姫様が――

「んがぁぁぁ〜〜………ぐぎぎぎ。ぐごぉぉぉ〜〜………」

 ――オッサンみたいなイビキと歯ぎしりをしながら眠っていた。

 彼女、どうもお姫様と呼ぶにはどこか致命的に足りないものがあるようだ。
 額に包帯が巻かれ、体のあちこちは医者や白魔導師に治療が施されたその身体は、白魔導ケーブルから引っ張った治癒の波動も相まって既にブレイブとの激闘の疲労と傷を全て回復させつつある。
 涎を垂らしながら幸せそうに眠る彼女の顔は安らかなのだが、その光景を見ていると微笑より先に苦笑が浮かぶのは何故だろう。

「――本当によく眠るな、イデアは」
『無理もあるまい。あの元帥閣下に一太刀浴びせるまで粘ったのだからな』
「『ジャイアントキル』だったか……我々もうかうかしていると抜かれてしまうやも知れん」
『それは困る。俺はイデアを護りたいのであって、護られたいわけではないからな』

 頭まですっぽり覆った漆黒の株との男のぼやきに、もう一人――男とは対照的に純白の鎧を着た女が笑う。

「お前のぞっこんぶりは相変わらずだな。流石は潜入任務を放り出して単身エタルニアまで戻ってきた男は言う事が違う」
『言うな!俺だって……俺だって任務でなければもう少しイデアのそばにいたかったのだ!……だが元帥閣下のご厚意がなければ今日戻ってくることさえ難しかった』
「では、またとんぼ返りか?」

 鎧の男はそれに頷き、ちらりとイデアの方を見る。
 その鎧の所為で表情は見えないが、どこか熱のこもる視線だった。

『久しぶりにイデアの寝顔を見れ……ではなく、元気な姿を見られたのだ。今はそれで十分!』
「……イデアの事となると少々色ボケするのも変わらんな」
『い、い、い、色ボケなどしていない!!』
「うぅん………?むにゃ……」

 と、騒がしさのせいかイデアが一瞬眉をひそめて唸った。
 起こしてしまったか――と身構えた二人だったが、やがてイデアは何もなかったように再び眠りにつく。二人はホッと胸を撫で下ろす。

『ゴホン!と、兎に角俺はそろそろ任務へ戻る。暫くイデアの面倒は任せたぞ』
「あ、ああ……まったく、話の一つでもしていけばよいのに、お前も不器用な男だ」
『お前に言われたくないぞ。妹に野武士扱いされてるくせに』
「何っ!?あ、アルテミアの奴がそんなことを!?
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