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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
29.ジャイアント・キル
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戦い、それが受け継ぐということ。

「ありがとう、みんな……あたしやってみる!」

 今から振るうのはきっと自分だけの剣ではない。
 これはそう、ブレイブが自身で言った通り――みんなの「希望」が籠った太刀。

 万感の想いをこめて、イデアは構えた。



 その瞬間、ブレイブは確かに見た。

 イデアの構えと、かつて戦った旧友の気迫が重なったのを。

「イデア……お前は越えようというのか。今日、ここで………いいだろう!お前にその資格があるのか、覚悟の程さえ見極められれば良いと思っておったが……最後まで見届けてやろうではないかッ!!」

 ブレイブは、敢えてそのイデアに自らの最高の技の一つを見せる事にした。

「我が捨て身の一撃を、その身に受けるがいいッ!聖剣技――『デスパレート』ッ!!」

 『デスパレート』――それは、奇しくもダンジョンに君臨する剣姫の愛剣と同じ意味を持った、決死の一撃。「防御力」を全て「攻撃力」に強制変換する『聖騎士』固有の文字通り捨て身の超攻撃技――つまり自らの防御力を代償に攻撃力を爆発的に上昇させる必殺の一撃だ。

 騎士の『踏み込み』もまた似たような法則が働いてはいるが、聖騎士の『デスパレート』はその段階を大きく凌ぐ。何故ならば『聖騎士』は全アスタリスクの中でも最高の防御力を約束するジョブなのだ。それを糧に生み出される攻撃力は、比類なき最強の一撃でもある。

 この一撃をまともに受ければ、如何にイデアとて戦闘不能は免れない。
 下手をすれば骨折して入院するどころか、命に関る可能性まである。
 それでも、ブレイブは構えたイデアに容赦なくその剣を振り下ろした。


 瞬間、二人の間の時間が一瞬止まった。


(――見える。お父様の剣が)

 ああ、そうか。だから剣をこのように構えていたのか。
 心のどこかが、感心したように納得する。
 確信する。これが、ひとつの到達点なのだと。

 確か、師匠の国では格下が格上にしっぺ返しを喰らわせることをこう呼ぶんだっけ――


「『窮鼠、猫を噛む』ッ!!!」


 剣と剣が重なった、その瞬間。
 まるで反射されたかのように正確に、神速のスピードで繰り出されたイデアのカウンターが『デスぺレート』を天井に弾き飛ばした。
 タイミング、速度、筋力、その全てが神懸かった芸術の一太刀。

 若き日、これと同じ光景に出会ったのをブレイブは想起する。
 最大のカウンターでブレイブを斬ろうとしたカミイズミと、最大の攻撃でそれを破ろうとしたブレイブ。結果、究極の攻撃と究極の反撃は拮抗した。その光景が、たった今再現されている。

 カミイズミの剣が、今度こそ完全にイデアに伝承された瞬間だった。

「我が全霊の剣を
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