29.ジャイアント・キル
[1/6]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
依然として、イデアとブレイブの『試練』は続いている。
一度は折れかけた心と、今にも折れそうな体を気合で支え、イデアは勝機を探した。
たった一つだけ、ブレイブを倒す技に到るヒントがあった。
昨日、カミイズミはイデアに『本気』を見せた。
その本気を今、この戦いで再現できればいいのだ。
あの瞬間、イデアは今まで見たことのないカミイズミの構えに正面から突っ込んだ。
そして、時間そのものが止まったような錯覚を覚えるほどの刹那の間に、イデアは敗北した。
何をされたのかは分からなかったが、イデアはその時の剣筋こそ見えずとも、体の動き自体は覚えていた。だから先日寝る前にずっとカミイズミの動きを「ものまね」しながらずっと考えた。
(あの瞬間、時間が止まったような錯覚………その正体は師匠の集中力そのもの。達人級の戦士はその集中力によってほんの一瞬の出来事を長い感覚で捉えるという……それの、多分究極形だ)
だが、極限の集中力があるならそれこそ正面から戦って打ち据えてしまえばいい。相手よりよく見えれば、よく動けるだろう。しかしカミイズミはそうせずに敢えて構えたままイデアを待ち構えていた理由――
(待っていた方が都合がいい……ううん、待っていなければ意味がなかったから!つまり、態と相手に先手を取らせて後手で必殺を取る戦法、カウンター攻撃!!)
それは、どれほどの鍛錬をすればそこまで研ぎ澄まされるのかを聞きたくなるほどの極限技術。
相手の動きを100%見切った上で、受け流し、利用し、一撃必殺の剣を叩きこむ。それこそがカミイズミの攻撃の極意。
今の一瞬だけでいい、その技を使う。
カミイズミが何十年にも及ぶ剣術修行の末に辿り着いた境地に、剣術歴10年にも満たないイデアが挑むなど無茶だという事は当の昔に解っている。それでも――他に可能性がない!
「思い出せ、あたし。思い出せ――」
経験。
姉弟子と鍛錬に打ち込んで叩きのめされた経験。
家族同然に育った男に訓練で負けて泣いた経験。
師匠に手も足も出ず、悔し涙が頬を伝った経験。
沢山の兵士と訓練して、どうにか勝利した経験。
ハインケル、バルバロッサ以外にも訓練に付き合ってもらった数多のアスタリスク所持者たちとの激戦がイデアの頭を駆け巡っていく。今までの人生で味わった全ての戦いの経験が、剣に注ぎ込まれていく。
(あ……そっか。今までの戦いは今の為にある。そして今の戦いは未来の為に……経験って、そうやって受け継がれていくものなんだ)
今、イデアの中には戦いの全てがあった。
あの本気のカミイズミも、ブレイブの猛攻さえもその中に内包している。
全てを受け入れて、全てを糧にして今を斬り裂く。
それが
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ