響ノ章
陸戦
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揮所の直ぐ側です」
「私が先頭を行く。ついてきて」
言うが早いか、私は駆け出す。戦艦と立ち向かう。そんなの、完全装備の艦娘だって恐ろしい。それを、今提督は一人でしている。持っていても碌な装備ではないだろう。
駆ける。疲労と嘔吐を催す気分の悪さが相まって今にも止まりそうになる足を動かして。地に着く足の感覚は今や希薄だ。時折ふらつく体を気遣ってか、鳳翔さんや警備隊の人が声をかけてくるが、なんでもないと応え続けて足を動かす。
そうして、今や瓦礫と化した戦闘指揮所後の側で、仰向けで倒れている提督と、提督に銃を構えている人を見つけた。銃を構える人はこちらに背を向けていて誰かは分からないが、将校か士官なのか、白い軍服を纏っていた。
そうして、その人は私達が何を言うよりも早く、構えた銃の引き金を引いた。
銃声がその場を満たした。実際には僅かな時間の事であっただろう。だが、それは酷く長いように感じられた。
帽子を被っていない提督の頭に、穴が開いていた。
「響殿、鳳翔殿」
警備隊の彼は、固まったまま動けない私達の肩を押す。私は目の前で起こったことが理解できずにただ押されるままに移動し、物陰へと移された。直ぐ側で、鳳翔さんも固まっていた。
「隊長か。現状報告を。二十三時までの状況は把握している」
「はっ。二十三時……」
状況説明をしていく隊長と呼ばれた警備隊の声を聞きながら、私の頭のなかでは先倒れていた提督の姿が離れなかった。死んだのだ、彼は。鎮守府内の最高位が死んだ。誰かも分からぬ男の銃弾で。
「湾内の敵艦隊は、この戦艦で最後です。残りは洋上、戦艦と空母の二艦です」
「洋上の敵は丙を含め先程撃滅を確認した。珠瀬鎮守府第二艦隊も響以外は生存確認が出来たと」
「響殿でしたら我々が生存を確認しました」
「何」
「発動機に損傷を受けたので、装備を投棄、遊泳し帰ってきたと」
「そうか。生きて帰ってきたか……」
その声には、安堵の響きがあったように思えた。
「只今を以って珠瀬鎮守府の命令系統は私が総括する。隊長、警戒令を解け。この戦艦の撃滅を以って、本戦闘を終了する。敵は撃滅された」
「被害状況をお尋ねしても宜しいですか」
「聞きたいか」
ぞわりと怖気だった。間近ですらないこの場所で、聞いているだけの私の背筋に冷や汗が流れる。それは、鳳翔さんも同じだったのか、小さく震えていた。
「鎮守府としての機能は停止。損壊した設備の復興にはどれ程かかるかわからん。人員に関しては非戦闘員には怪我人が数名。どれも避難中に怪我したものだ。艦娘に関しては怪我人が多数。だが、死者はいなかった」
一瞬だけ晴れた私と鳳翔さんの顔は続く言葉で固まった。
「生きているだけ奇跡、そう言える者は居たがな。戦線復帰は不可能。否、日常生活ですら危ういも
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