9部分:第九章
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な色ではなく、そこには艶が必ず含まれている。それによっても人の心を捉える」
その言葉は続く。
「そうした花は他にはありません。薔薇だけです」
「薔薇だけ」
「これ程までに濃厚な退廃と魔性を含み、なおかつ美しく誘うのは。他にはありません」
「えらく薔薇は好きなのね」
「花は。どれも好きです」
速水はうっすらと笑ってこう述べた。
「どの花もね。ですが薔薇は特に」
「その薔薇が誘う魔は確かにあるわね」
沙耶香はそう言葉を返した。
「薔薇そのものが魔性なのだから」
「はい」
「この五色の薔薇が。果たして私達に何を見せるのかしら」
「さて」
「魔性か、それとも退廃か」
沙耶香は薔薇の園を眺めながら言う。
「それとも他のものか。何でしょうね」
朝の薔薇は何も語らない。だがそこには確かに何かがあった。薔薇は何も語らずに二人を見ている。二人にもそれはわかっていた。二人は薔薇のその魔性の誘惑を感じながら園にいたのであった。
薔薇の園のかぐわしい香り。それは日が高くなるにつれてその強さを増していくようであった。二人はそれを感じながら館を、そして庭を巡っていた。そして遂に最初の事件が起こったのであった。
「むっ」
それを最初に見たのは速水であった。この館には礼拝堂もある。何代か前の主は敬遠なクリスチャンであった為にそこに作らせていたのである。今では教会としても使われており神父とシスターがいる。事件はその教会で起こったのであった。
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