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竜門珠希は『普通』になれない
第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
今日も今日とて脅迫的に共感を強制
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ゃん」

 まだ指折り数えるくらいしか昼食をともにしていないものの、珠希も星河の食事ペースを知っている。何しろ体の線が細い星河は珠希と同じかそれ以下の少食で、正直、成長期の男子があの食の細さで――と首を傾げるほどだ。しかも珠希の弟・聖斗や昴と比べても食べる速さが明らかに遅い。
 これでは始業式の日に貧血起こしたというのも頷ける。だからといって珠希のほうに倒れてきて、珠希を道連れに保健室に退場していい許可をした覚えもないのだけれど。


「しゃあねえ。今から連れてくるよ」

 珠希が頑として譲らないことを察してか、昴はベンチから腰を上げ、スマホを取り出しながら星河を呼びに行こうとする。
 こういうときは男性が、理論が先に折れたほうが得なのだと昴も昴で理解しているつもりだった。だが――。

「あ、あたしも行く」
「いらねえよ。てか席取っとけ」
「女の子を一人置いてけぼりにする男の子はどうかと思うなぁ」
「本物の女子は自分(テメエ)のことを『女の子』だとか言わねえ」
「じゃあ大丈夫じゃん。あたしそんな女子力高くないし」

 昴が唯一理解できていなかったことがあるとするなら、今日の相手はそこらに群れている女子ではなく、竜門珠希であったこと。このクラス内難民少女の脳内構造は計算高く論理的で、むしろ男性的な思考をすることがある。論理より感情を優先したところで、そのような人間は労働社会にとって邪魔・不要・有害であると身をもって知っており、珠希自身もまたそのような腐った林檎(どうしようもないヤツ)を同業者・関係者らと結託して業界から排除(・・)したことがあるからだ。狭い業界マジ恐い。どの業界とは言わないけど。

 しかも厄介なことに、こうやって珠希は論理的に女子・女性であることを上手く盾にして自分に有利になるよう会話の方向性を変えてくる。事実、何か言いたげに昴はもごもごと口元を動かしていたが、結果的にそれ以上の追及は取り下げてしまった。


 それはともかく、そもそも朝5時に起きて父親や弟妹の分まで昼食のお弁当を作り、掃除・選択・裁縫まで難なくこなし、手が空いた休日には家全体の掃除や敷地内にある土蔵の整理までこなす女子高生が自分に女子力がないと判断する基準はどこにあるのだろうか。
 カワイイを作り出す(・・・・)化粧スキルなのか、定番ブランドの最新作の洋服や高級アクセの一番人気を貢がせる(・・・・)話術なのか、はたまたシャンデリアの下にいる運命の王子様(ATM)をカノジョや奥さんから寝取る(・・・)ベッドテクなのか――。

 少なくとも生まれつきシミ・シワ・ムダ毛や日焼けとは無縁で、素顔(すっぴん)でもナンパされるレベルの外見を持ち、現在15歳ながら何だかんだで年収数百万は稼ぐ原画家・イラストレーターである少
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