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竜門珠希は『普通』になれない
第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
今日も今日とて脅迫的に共感を強制
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いんき(変換できry)がある。

 特に先程の会話の「もうっ」と言いながらふてくされて頬を軽く膨らませた星河の表情には、珠希の長女体質が母親体質にクラスアップしてしまいそうな――クラスチェンジと表現すべきだった否かはご想像に任せたいと思う――勢いで(理性ゲージの)バーが大きく限界突破近くまで動いた。
 とはいえこのグッピー少年、弟自慢を始めれば2時間は語れる自覚症状皆無のブラコン珠希(おねーちゃん)の、もう歪みきって歪む場所がないくらいの性癖に新たな価値観を植えつけさせてしまったのも事実であった。

「竜門。お前相手によって態度180°変えてるだろ? 絶対そうだろ?」
「変えてませんよー。変えてるとしたら1080°変えてるし」
「それ三回回って元に戻ってるじゃねーか!」
「あらそれは人として当然のことではなくて?」
「人として根底から間違ってんだよ!」

 1080を瞬時に360で割った昴の計算の早さに驚きながらも、既に原画家・イラストレーターとして一般社会人と同等かそれ以上の金銭を稼いでいる珠希としては、相手によって態度を変えるのは当然のことだと本気で思っている。

 心も身体も人それぞれ違いがある。それは良いところも悪いところも包括的に見ての人間像であり、「ゆえに、平等的に、博愛主義に基づいてみな隣人を愛しましょう」といった妄想を支える屋台骨であり、その大前提として隣人は「誰もが素晴らしき理性を持った羊飼い」であることが求められる。
 しかしながら現実世界、聖人は絵画と書物の中にしかおらず、現実社会での立場には責の軽重や専門性などに伴う優劣が生じる。ましてや栄光と名誉と保身のためなら誰しも殺人者(カイン)にもなってしまうご時勢に羊飼いの頭数などごくごく少数である。

 そこに中学生の時点から契約社会と大人の狡猾さ、世間一般の世知辛さと残酷さを身に染みて覚えてしまえば、いくら無知と無邪気の塊だった少女でも人間の行為の本質に平等も博愛もないと思うようになっても無理のない話だ。
 実際、珠希の知る原画家さんの一人は原画を卸したメーカーから給料が支払われておらず、メーカーとも代表者とも連絡がつかないという。


「それで星河くん。今日は体調よさそうだね」
「うん。ここ数日は天気もいいしね」

「おい、これ見よがしに話変えてんじゃねーよ」

「そうだね。でも星河くんって花粉症とか大丈夫なの?」
「僕は大丈夫だよ。知り合いには結構いるけどね」
「それは大変だね」

 実のところ、「人それぞれ違いがある」のは肉体と精神であり、その性能と限界である。心の中身までは誰も測れない。珠希のように睡眠時間が3時間でも平然と日常生活を送れる少女がいれば、入学式の日に緊張と今後の高校生活に覚えた不安のために貧血と過呼吸を
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