マブラヴ
1059話
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右腕は俺が掴んでいる為に吹き飛べない。
かといって、腕を握って蹴りを放った状態である為に、攻撃手段は……まだあった。
「ふっ!」
蹴りを放った状態から身体を捻り、未だに空中に存在していた酒呑童子に向かって振るわれたのは、俺の腰から生えている竜尾。
文字通り、竜の尾だ。
「ぐはぁっ!」
そこ身体の捻りをそのまま使って放たれたその一撃は、見事なまでに酒呑童子の胴体へと命中する。
もっとも、本当のドラゴンであるのならまだしも、所詮は人間と同じ大きさの俺が放った竜尾の一撃だ。
確かにそれなりの痛みは与えただろうが、致命的な一撃と呼ぶには弱すぎた。
事実、酒呑童子は苦痛の悲鳴を上げつつも、左手の爪を自分の右腕を握りしめている俺の右腕へと向かって振り下ろす。
「させるか、よっ!」
魔法障壁を破壊する程度の威力はある酒呑童子の一撃だ。まともに食らえば久々に痛い思いをしそうだと判断し、酒呑童子の身体を解放……すると同時に、一瞬前まで俺の右腕のあった場所を酒呑童子の左腕が通り過ぎ、それを見越して放たれた蹴りがそのがら空きの胴体へと命中する。
肉をコンクリートに叩きつけたような音を立てながら吹き飛ばされた酒呑童子は、地面に数度程バウンドしながら10m程の距離を吹き飛ばされ、体勢を立て直す。
「随分と頑丈な奴だな。これでもそれなりに生身の戦闘には自信があったんだが」
「……へっ、よく言うわい。その姿同様、化け物だなお前さん」
そう告げた酒呑童子は、倒れていた状態からすぐに立ち上がる。
そして痛そうに顔を顰めて向けた視線の先にあるのは、自分の右腕。……ただし、その手首からは骨が見えていた。
本来その手首に存在している肉は、俺の右手の中。
先程の蹴りで吹き飛ばした時、酒呑童子の右腕を掴んでいた手に力を入れ、その肉を毟り取ったのだ。
元々コンクリートの類でも容易く毟り取れるだけの握力を有するのだから、この程度の事はそう難しくはない。だが……
「化け物はどっちだよ」
腕の骨が見える程に肉を毟り取られたというのに、その傷が見る前に回復――むしろ修復と表現した方がいい――していく。
ちょっと尋常ではない程の再生能力だな。
さっき炎獣に対して使った魔眼といい、鬼としても異常な程の再生能力といい、俺の知っている酒呑童子の伝承とは全く違う。いや、違い過ぎると言ってもいい。
もっとも、俺が知っている酒呑童子の伝承なんて現代風に簡単に分かりやすくしたものでしかない。原典とも言える話の方には、実は魔眼のような力を持っていて、異常な再生能力を持っていたとか言われても驚かないが。
「行くぞ、おんどりゃぁっ!」
怒声を叫びながら、地を蹴る酒呑童子。
相変わらずその速度は
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